新装オープンしたクロエのショップで、 アン=フランス・ドートヴィルに会う

アン=フランス・ドートヴィル(Anne-France Dautheville)という名前、皆さんもこの春以来何度か耳にしたことでしょう。クロエ16-17秋冬コレクションのインスピレーションとなった、フランス人の旅行家&エッセイストです。彼女は’70年代にバイクで中東からアジア、カナダ、オーストラリアと世界中を一人で旅してその冒険の記録を綴り、写真やビデオにおさめました。出版されたエッセイは3冊、『Et j’ai suivi le vent』(1975年)、Une demoiselle sur une moto(1972年)、 そしてLa piste d’Or」 (1982年。いずれも絶版で読みたいのにまだ入手できないでいるのですが、ネット上で彼女のさまざまな写真を発見! 花柄プリントの流れるようなシルエットのドレスにハイヒール、またはムートンのビッグコートにフレアジーンズでバイクにまたがった姿、白のTシャツにレザーのサロペットでキャンピング……。どれもまさに、70年代の自由さや軽やかさをメゾンのDNAとしているクロエの原点とも言えるルック。しかもどんなシチュエーションでもふわっとしたロングヘアと目元を強調したメイクで、限りなくフェミニン。クロエ(Chloé)のアーティスティック・ディレクター、クレア・ワイト・ケラーがリサーチをするうちに彼女の写真を偶然見つけて惚れ込んだ、というエピソードにも頷けます。

コレクション発表からは半年以上経ちましたが、3月のランウェイショーには来られなかったと言うこのミューズ、アン=フランス・ドートヴィルが先週、はじめてオフィシャルでクロエのイベントに顔を出しました。アヴェニュー・モンテーニュのショップで開かれたパーティでアン=フランスを見つけ、「日本人です」と自己紹介すると、彼女の第一声は「カワサキ!」。72歳とは思えない、元気で素早い反応でした。「日本に行ったのは1973年。日本人たちは、Kawasaki 125なんて小型バイクでどうやって私がアジアを横断したか、不思議がってね」と、当時を回想するアン=フランス。秋冬コレクション発表の1か月前にメゾンからコンタクトされたことに関しては、「海の奥に潜っていたところを、呼びおこされた感じだったわ」。ファッションウイークのしばらく後に、フランスの田舎に住む彼女をクレア・ワイト・ケラーがたずね、一緒に当時のアルバムを見ながらピックアップした写真は、60点。これらは現在、クロエのショップにて、スライド上映中です。

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ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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