ボタニカル・スキンケアのイソップ発信によるフレグランスの3作目が発表されました。バーナベ・フィリオン(Barnabé Fillion)氏調香のヒュイル(Hwyl)。彼の香り作りの哲学は、複数の感覚に訴える“マルチ・センソリー”だとか。つまり、嗅覚だけでなく、ビジュアルや音をも喚起する香り。今回、彼が“静寂感”を呼び起そうとリサーチを重ねた結果、たどり着いたのは日本の森林でした。「日本、と言っても文化ではなく、日本人の自然に対する視線に惹かれました。特定すれば、神道に見る“自然との関わり”です」。彼は16歳の頃からリピーターの、日本びいき。香道を極め、松栄堂とコラボレーションしたこともあるそうです。今回は特に九州と伊勢の森林、苔寺の庭園にフォーカス。「ウッディで、かつミネラルな香りを目指しました。材料に選んだのはヒバと糸杉の木、そして樹脂からとれる乳香。つまり、木の様々な側面を融合させたのです。香りをまろやかに仕上げるスモーキーなタッチは、マダガスカル産のブルボン・ベチバーで」。ちなみにヒュイルとは、“感情の高まり”の意味。「今ではほとんど使われていない言葉なため、神秘的なところもこの香りを象徴していると思います」
一方、1643年の創業で王室御用達の歴史を持つキャンドル・メーカー、トゥルードン(Trudon)による初のフレグランスは、3人の調香師による5香調。イメージ作りにあたって調香師たちはまず、パリの狩猟美術館をはじめ特別に選ばれた場所で、ソフロロジー(催眠術などを利用する心理療法の一種)の専門家による、“感覚を喚起する”セッションを個別に受けたそうです。私の一番のお気に入りは、ミラー・ハリスのファウンダーでもある女性調香師、リン・ハリスによるOlim。トップノートはベルガモットとラヴェンダー、ミドルノートはアニス、ピンク・ペッパーコーン、そして丁子、ラストノートはパチュリ、安息香、ミール(植物性ゴム樹脂)、ジャコウ。パウダリーかつスパイシーで、優美で繊細、同時にモダンな香りです。
そしてエルメスからは、自由で大胆で冒険心のある若い女性をイメージした、ツイリー ドゥ エルメス。「色彩とファンタジーに溢れた世界を表現したかったんです。私がエルメスで享受している“自由”を生かし、香水づくりのタブーを破ってみようと。触発されたのは、カレを自由な発想で身につけている若い女性たちでした」。こう語るのは、メゾン専属の調香師、クリスティーヌ・ナジェル氏。「香り作りでは普通ちょっとしたタッチにしか使われないジンジャーを、幾度もの試作を重ねて最大限に使ってみたんです。ここに加えたのは、チュベローズとサンダルウッド。シルクの糸からツイル地が織られるように、主張の強い素材を“織り交ぜ”た香りが出来上がりました」。こんな彼女の思いは、映像にも凝縮されています。メゾンサイトで公開されている、女性たちがダイナミックに踊るムービーも、必見。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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