2017.12.07

普段何気なく着ているニットは、どうやってできている?

普段何気なく着ているウエアや小物の素材出所、気になりませんか?どこでどんな風に作られているか、という疑問をクリアにしてくれるのが、大手の繊維業者Chargeurs Luxury Materialsによる新しいメリノ原羊毛「オーガニカ」(Organica)。トレーサビリティ(追跡可能性)100%、つまり生産から販売までの状況を全て公開していると聞き、遥かアルゼンチンのパタゴニアまで足を伸ばして、羊牧場と工場を訪ねてきました。

ブエノスアイレスで国内線に乗り換え、パリから20時間ほどで到着したのは、サンタ・クルス州の村、エル・カラファテ。ここにある「オーガニカ」提携の牧場で、まずは羊毛についての基本的な話を聞くと、知らなかったことばかりで目からウロコ!たとえば、羊一頭を丸刈りにして取れる毛は、4〜5kgも。つまり毛が伸び放題だと羊はこの重みと厚みを常に背負っているわけで、肌呼吸と歩行に支障をきたして生き絶えてしまうそう。また強風、極度の乾燥や猛暑などは、羊毛の大敵。だから、いろいろなストレスから羊を守り、気候のいい時期に刈り込みをすれば、羊たちの心身の健康と羊毛のクオリティの両方が保証されるのです。

「オーガニカ」のコンセプトは、自然環境、動物、そして労働者へのリスペクト。どこが新しい、また他のウールと違うのか、例を挙げると……。
牧場では化学物質は一切使わず、群れを追い立てるのには、棒で羊をつつく昔ながらのやり方を、プラスティックのはたきで音を立てる方法に変更。そして諸条件を明確な定義にし、それらが守られるよう状況を監督し、必要に応じて全てを公開すること。こんな環境で取れた原羊毛は次に「オーガニカ」管轄のコーミング工場に送られ、不純物を取り除いて乾燥、そして櫛のような機会を使って梳く(コーミング)作業を経て、“ウール・トップ”に加工されます。工場での水は、リサイクル使用。

ただしこの後、毛糸やウール地としてデザイナーたちの手に届くには、紡績と言う段階が不可欠。前述のさまざまなプロセスにより「オーガニカ」は価格が少し上がるので、紡績業者たちは、ウール・トップ買い付けの際に足踏みするかもしれません。でも、意識の高いデザイナーや消費者たちが声高に“倫理的なウール”を求めたら、業者も動かされることでしょう。多くの人々が共鳴すればするほど「オーガニカ」がより早く、たくさん市場に出ることに。是非インスタグラムで「オーガニカ」をフォローしましょう!

 

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

記事一覧を見る