「次なるゴーシャ」はここから生まれる! ロシアのファッション事情を最速レビュー

東欧づいていた今年、締めにはメルセデスベンツ・ファッションウイーク・ロシア(MBFWRussia)を見に、モスクワに行ってきました。これまで行ったトビリシやキエフ同様、モスクワのファッション・システムはちょっと変わっています。プレス陣や関係者を除き、ショーの席は有料なので、会場に集まるのは一般客たち。つまりこの街では、ファッションウイークは市民にとってのちょっとしたお祭り。また合同展示会はほぼ皆無で、ショーの後、ドレス系のブランドは顧客を集めての受注会を、若手のブランドは独自のルートで国外でセールスをするか、オンラインショップを発展させるのだとか。ちょうど、アートの世界でもロシアではアーティストとギャラリーの相互関係が確立されていないという記事を読んだばかりだったので、ソビエト連邦崩壊から30年近くたった今でも、共産社会の影響は大きかった、と納得。

 

そんなハンディキャップをエネルギーに変えて弾けているのが、ポストソビエト・ユースと言われる若手たちです。MBFWロシアのサポートにより、HSE(イギリスの大学と提携して5年前にモスクワにオープンしたばかりのアート&デザイン英国高等学校)在学生を含む若手たちは、フトゥルム・モスコウ(Futurum Moscow)に結集し、荒削りながらエッジーで実験的なコレクションの数々を披露しました。彼らのスタイルは三者三様ながら、顕著なのはゴーシャ・ラブチンスキーの影響。2008年のデビュー以来、地元のスケーターのルックとロシア構成主義を思わせるグラフィズムとのミックスを、世界的なトレンドに押し上げた彼は、今やロシアのアイコンなのです。

一方メインのキャットウォークでのベストは、アレクサンダー・アルチュノフ(Alexander Arutyunov)。彼はジョージア出身・在住ながら、学生時代をここで過ごした絡みもあり、2011年以来モスクワでショーを発表しています。私も1年半前に、たまたまトビリシで開かれた彼のショーを見て、ちょっと気になっていました。オルタナティブなデザインを洗練されたフェミニンなルックに仕上げたコレクションは、完成度大。もう一人はサンクトペテルブルグの工科アカデミーに在学中の1995年から既にプロデビューしていたベテラン、アレナ・アフマドゥーリナ(Alena Akhmadullina)。ニューヨークでもプレゼンテーションをしていて、国際的にも認知されているデザイナーです。

次回は、ショーの合間に歩いたモスクワの街のハイライトをお届けします。お楽しみに。

Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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