この秋から冬にかけて、パリで開かれているアート展には、二つの大きな流れがあるようです。一つはカラフルでポップな、ワンダーランドのような展覧会。なかでも私の一押しは、トゥット・ポンティ。1921年から50年以上も活躍したイタリアのインテリア・デザイナー&建築家、ジオ・ポンティの回顧展です。カラフルでグラフィカルで、ウイットのきいた彼の作品の数々は、家具や照明はもちろん陶器からシルバー・ウエア、ファブリックまで、広範囲に渡ります。デザインに明るくない人も、展示品のいくつかは見たことがあるはず。彼が手がけたホテルや個人宅の内装も再現されていて、ワクワクする世界です。
Tutto Ponti, Gio Ponti Archi-Designer展は開催中〜2019年2月10日まで。 Musée des Arts Décoratifsにて。 107, rue de Rivoli 75001 Paris
また、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーで開かれて話題になった「マイケル・ジャクソン:オン・ザ・ウォール」展がパリにやってきました。彼の代表作のビデオクリップ、ステージ衣装、アルバム・ジャケットを始め、現代アートの作家たちによるインスタレーションや写真、絵画などは、インスピレーション・ソースとしてのマイケルをクローズアップ。私が見入ってしまったのは、エレイザベス・テイラー主演の映画「クレオパトラ」とマイケルのビデオ・クリップをクロスオーバーさせた、Michael Robinsonによるビデオ作品「These Hammers Don’t Hurt Us」です。ポップ・カルチャーにおける彼の影響力を改めて感じてうなること、請け合い!
Michael Jackson : On The Wall*展は開催中〜19年2月14日まで。Grand Palaisにて。3, Avenue du Général Eisenhower 75008 Paris
もう一つの流れは、今年が日仏友好160周年に当たることから2019年2月まで続行中の、「ジャポニスム2018」。ここ1年ほどパリでは近代アート、建築の総括やら伝統芸能の公演など、数多くの日本絡みイベントが開催されて来ましたが、ハイライトはヴェルサイユ宮殿で開催中の、杉本博司展。写真を単なるビジュアルアートとしてより、広い意味での哲学として捉える彼の作品は、驚きに満ちています。ピンポイントの開催地は、かのマリー・アントワネットの憩いの地であったトリアノン。モデルはルイ14世を始めとするヴェルサイユ宮殿を象徴する人物、またヴィクトリア女王からサルバドール・ダリまで、宮殿を公的に訪れた著名人たち。写真が存在しなかった時代の人物たちが蘇ったかのような迫力のある写真の一連は、なんと蝋人形がモデルです。冬のヴェルサイユ宮殿に、杉本氏が言うところの“亡霊”たちに会いに行ってみては?
Sugimoto Versailles, Surface of Revolution展は開催中〜19年2/17。ヴェルサイユ宮殿内、トリアノン区域にて。
ほかにもこの時期のパリには、見るべき展覧会が目白押し。詳しくは写真を参照してくださいね。
text: Minako Norimatsu