ディオール、ゴルチエ…… 2020年春夏オートクチュール・ハイライト vol.2

1月末のクチュール週間レポートの第二弾では、話題性の高かったショーとイベントをご紹介しましょう。
まずは、女性の限りない創造力を訴求するという姿勢を貫いているマリア・グラツィア・キウリによる、ディオール。今回の会場演出は、アメリカのフェミニスト・アートの第一人者、ジュディ・シカゴに委ねられました。“女性が世界を支配するとしたら?”といった数々のメッセージが掲げられた垂れ幕。その下を歩くモデルたちがまとったのは、古代ギリシャの女神スタイルのルックの数々です。アンティーク・ゴールドとシルバー、白を基本色とし、フリンジやドレープ、プリーツをさまざまな形で取り入れたコレクションは、まさに女性賛歌と言えるでしょう。

一方まるでスーパーボウルのライブ・パフォーマンスのようなお祭り騒ぎとなったのは、キャリア50年周年を機にコレクションという形での発表をやめることにしたジャン=ポール・ゴルチエの、フェアウェル。ショーに先んじては、ファッション・ラバーズにとってのカルト映画「ポリー・マグー お前は誰だ?」から抜粋したお葬式のシーンが投影されました。そして幕が開くと、棺からファースト・ルックのモデルが登場。これはもちろん、ゴルチエらしいブラック・ユーモアです。そしてショーのトラック・リストで繰り返し使われたのは 「How to Do That?(ゴルチエのフランス語なまりの言葉をハウス・ミュージックとしてリミックスした、1989年のヒット曲)」。またランウェイには 往年のトップモデルに混じって“ジェンダーレス”の流れの先駆けともいえるゴルチエのミューズ、男性モデル・タネルも登場。5つのチャプターに渡る、ゴルチエのレイトモチーフやアーカイブズからのベスト、のべ200以上のルックのオンパレードは、歌うボーイ・ジョージの脇でゴルチエが一瞬胴上げされるシーンで幕を閉じました。ただしまだ68歳の彼は、これで完璧に引退してしまうわけではありません。詳細は今後のニュースで。

このほか、期間中にはフェラガモやプラダなどイタリアのメゾンも、クチュールにふさわしいイベントを開催しました。次回はプレタポルテのパリFWからお届けします。お楽しみに。

Text: Minako Norimatsu

 

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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