「アクネ ペーパー ブック」を通じて改めて感じる、アクネ ストゥディオズの革新性

去る7月9日、「アクネ ペーパー ブック」が発売されました。これは2005年から10年近くの間、アクネ ストゥディオズが年2回発行していた刊行物Acne Paperからの抜粋に、新規寄稿のエッセイやクリストファー・スミスが撮り下ろした写真を加えて編集された、豪華本です。ちなみにクリストファーは南アフリカ出身、5年前よりインスタグラムで知られるようになった、25歳の若きアーティスト。この機会に彼は、過去のAcne Paper 15号分の各テーマを再解釈し、変装してのセルフ・ポートレートの一連を製作しました。中でもPlayfulnessと言うテーマにインスパイアされ、ニジンスキーによるロシアバレエの代表作「牧神の午後」の獣を思わせる出で立ちの一点は、表紙に。その他Youth, Elegance, Art and Spiritualityと言った奥深いテーマは、 “多様性”が叫ばれるようになった昨今にずっと先んじて、Acne Paperがジェンダーやジャンルを越えて先鋭的なクリエイティブ・ピープルを引き寄せる糸口となりました。ローンチから1か月近くたち、本はソールドアウトになってしまいましたが、噂ではAcne Paper自体が復活するとか!?

思えばスウェーデンの友人からアクネ ジーンズ(当時の名称)のことをはじめてきいたのは、2000年代初頭のこと。その後まだPRはストックホルムの本社のみだったアクネ ストゥディオズのアイテムを度々シュプール誌上で紹介するようになりました。ブランドのクリエイティブ・ディレクターであるジョニー・ヨハンソンが意気投合したエディター&アートディレクターのトーマス・パーソンを編集長に迎え、Acne Paper第1号が発表されたのは、その少し後の話。中綴じ大判のフォーマットのこのマガジンは、ファッション・ブランドのカタログではなく、アーティストたちはもちろん、他メゾンのデザイナーもフィーチャーしているではありませんか!大御所ではスノードン卿やサラ・ムーンから若手ではヴィヴィアン・サッセン、ジェイミー・ホークスワースと言った、カメラマンのラインナップも素晴らしい。こうして初版から毎号Acne Paperをコレクションするようになった私は、今年の初めに引っ越した際も、バックナンバーは全て大切に取っています。

 アクネ ペーパー ブック」ローンチに先んじて、パリではクリストファー・スミスによる写真の一連と、Acne Paperのバックナンバーを一望できる展覧会も開かれました。スウェーデンを拠点とするだけあって、オーガニックやエコロジーが社風の一つでもあるアクネ ストゥディオズらしく、テーマカラーは、グリーン。ヘルシーな創作フードで最近ファッションのメゾンから引っ張りだこのバルボステによるケータリングも、この色に準じて展開されました。私ごとですがこの夜は、先週天国へと旅立ってしまった私の愛犬スウィーティーも同行。上の階でジョニーに挨拶すると「あ、君だったんだね。下の階ですれ違ったけど、飼い主はさておき犬に見とれてしまっていた(笑)」と言われたのが、私に取ってはかけがえのない思い出です。

 Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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