オンラインまたはフィジカルで体験、パリ・オペラ座のプログラム

ここ数年来、通常は毎年秋にパリのオペラ座で開かれる、ガラ公演。向こう1年間のプログラムを披露する、華やかなイベントです。メセナは、シャネルとロレックス。コロナ禍によるキャンセルを挟んで2年ぶりの今回は、音楽とダンスと部門ごとに、2つのソワレが繰り広げられました。まず音楽部門では新しいディレクター、ギュスターヴォ・デュダメルによる指揮の元に、ビゼー作曲のカルメンを始めとする定番のほか、比較的新しいものではジョン・アダムズのドクター・アトミックを加え、計6演目のオペラの抜粋が演奏されました。

 その2日後に開かれたダンス部門の公演の序章は、恒例の「デフィレ・ド・バレエ」。デュダメル自身が指揮を取ってのオーケストラ「トロイアの人々」第一幕の生演奏に合わせての、まだ幼いバレエ学校の生徒たちのなんとも愛らしい行進から始まりました。登場するダンサーたちの年齢層もレベルも徐々に上がったところで、最後はシャネルによるチュチュとティアラを纏った女性10人と男性6人から成るエトワール・ダンサーたちが大集合して、基本ステップを披露したのです。そして幕間の後は、ダンス部門のディレクター、オーレリー・デュポンが選んだ演目が。通常は新しいプログラムからの抜粋ですが、今回は例外的に、昨年コロナ禍で無観客のオンライン配信になった2つのコンテンポラリー・ダンスが上演されました。まずは注目を集めるダミアン・ジャレの振り付け、現代アーチストJRによるコスチュームでの、Brise-Lames。国際的に活躍する日本の作曲家&ピアニスト、中野晃治(こうき)のミニマルな音楽に乗せて、ダンサーたちはまるで大地に吸いつけられるかのような体の動きを表現しました。次はテス・ヴォルカーによるClouds Inside。ここでは男女二人が軽快に、パ・ドゥ・ドゥーのモダン・バージョンを披露。いずれもオペラ座での公演は今のところ予定されていませんが、オンラインで鑑賞可能です。そして2度目の幕間の後特別に上演されたのは、1948年に振付師ハラルド・ランダーが創作した、Etudes。稽古場のごとくバーだけを舞台装置としたステージで遊び心たっぷりに展開されたのは、クラシック・バレエのレッスンのようなシーンです。6月にエトワールに任命されたばかりの韓国人バレリーナ、セウン・パクが主役を務めたこともあり、このアカデミック、かつ楽しいバレエに、会場は湧き上がったのでした。

 

さて、今度は今後のパリ・オペラ座のプログラムから、私のお勧め演目をご紹介しましょう。日本からの海外旅行が解禁になった日に備えて! Ashton/Eyal/Nijinskiなるロシアン・ナイト(11/2920211/2)の3部構成は、まずフレデリック・アシュトンによるクラシックな「ラプソディー」から始まります。そしてなんと言っても見所は、本誌11月号の“アートとファッション、フェミニズム”特集でも紹介したイスラエルの女流振付師、シャロン・エイアルによるオペラ座のための初のクリエイション。ドビュッシーの音楽に乗せてのロシアン・バレエの名作「牧神の午後」を、彼女はさらにモダンに再解釈したのです。コスチュームは彼女と3年前にディオールのショーでコラボした、マリア・グラツィア・キウリ。そして最後はニジンスキーによる振り付け、ストラヴィンスキーによる音楽であまりに有名な、春の祭典で幕を閉じます。チケットは早めの購入をお勧めしますが、信用できるオペラ座のサイトには、ラストミニッツ・チケットの可能性も。(サイトで無料アカウントを作り、ticket exchangeのセクションへ)。またL’opera chez soiのアカウント(有料)でなら、ライブ配信や後日の閲覧も可能です。

 Text: Minako Norimatsu

 

 

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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