2021.12.09

エルメスフィットのパリ版は、クラシック建築の会場が舞台

東京でも11月に開かれ、世界数都市を巡回中のHermèsfitが、パリではこの12月初頭に開催されています。エルメスフィットは、靴からベルト、ブレスレットなどエルメスの小物を使ってワークアウトする、という全く新しい発想の遊び心溢れる企画です。プログラムは、例えばカレ(スカーフ)を手に持ってするヨガ、ベルトを使ってのストレッチ、そして頭にのせた帽子を落とさないように精神を集中させながらポーズをとるエクササイズ、ダンベルに見立てた靴を履いて足を鍛えるトレーニングなどで、各都市ほぼ共通。この他、エルメスのベルトやブレスレットに見るシグネチャー、角錐型をしたメドール・スタッズをオレンジ色で配したクライミング・ウォールや、カレで仕立てたサンドバッグをパンチできる、ボクシングのコーナーも楽しめます。オープニング・パーティでは、ローラー・ブレードのダンサーも登場しました。乗馬に限らず、エルメスの世界とスポーツ全体が、実はこんなに距離が近かった、とは新しい発見です。テーマカラーはもちろん、メゾンを象徴するオレンジ。各コーナーでは、プロのコーチたちがオレンジの色のウエアに身を包み、丁寧にワークアウトの指導をしてくれるだけでなく、記念写真も撮ってくれるという、至れり尽くせりのサービスでした。

各都市、場内設定もほぼ同じとのことですが、パリ版の醍醐味は、その舞台。会場となったのは、サンジェルマン・デプレにあり、よくイベントやファッション・ショーも開かれる19世紀初頭の建造物、エコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)。建造時の主流様式、古代ローマやギリシャに由来するネオ・クラシックの壁画やギリシャ風彫刻に囲まれたここは、まるで美術館のような美しさです。またHermèsfitのために会場中に描かれているグラフィックではコリント式円柱が顕著ですが、よく考えたらオリンピックの発祥地であるギリシャが着想源でしょうか。これがエコール・デ・ボザールという環境と相まって、歴史や文化を大切にするエルメスと言うメゾンの奥深さが感じられる、Hermèsfitパリなのです。

ちなみに二年前にはカレ・エルメスなるイベントをご紹介しましたが、エルメスでは新商品のローンチでもテーマ・イベントでも、いつも独創的なアイディアでの体験が楽しめます。次はどんな仕掛けで驚かせてくれるのかが楽しみです。

 Text: Minako Norimatsu

 

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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