ついにアルベール・エルバスが、帰ってきた!!!

オール・デジタルで発表された、1月末のパリ・クチュール・ウイーク。観客無しのショーの配信やクリップ仕立てのビデオ公開が多数を占める中、話題をさらったのはアルベール・エルバスによるAZ Factoryのローンチ・ビデオ、The Show Fashionでした。


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年前にランバンを去った後、フレデリック・マルとのパルファン、 コンバースやトッズとの小物など単発コラボレーションを重ねていた彼が、やっと自身のブランドを立ち上げたのです。この間リチャージのために各地を旅していた彼にとって、最も刺激的だったのは最新テクノロジーの震源地、シリコン・バレーだとか。この意外な旅先での様々な出会いから、テクノロジーとヒューマニティの相互関係にインスパイアされ、AZ Factoryの構想が固まったようです。AZAlber Elbazの最初と最後のアルファベット、そしてデザイナーよりも服作りのエンジニアとしての新しい立ち位置から選んだ言葉はファクトリー。ブランドのコンセプトは、彼のアイデンティティである彫刻然とした立体的なシルエットを目指しつつ、プロセスや素材にはテキスタイルの最新技術を導入すること。こうして、スペインやイタリアの工場との共同開発を通じ、3つのグループから成るコレクションが生まれました。

まずは、ドレスの一連にトップスやレギンスも含めてのMy Bodyグループ。AnatoKnitと命名された伸縮性が13段階に渡るライクラ生地を駆使し、バストやヒップ周りには緩い伸縮率、ウエストは高い伸縮率でぎゅっと締めることによって高度のフィット感が生まれたのです。ここでは特に、XXSからXXXXLまで、サイズ・レンジが広く設定されています。また、タイトなドレスの背中の開閉をを楽に一人でできるよう、ウエットスーツからヒントを得てジッパーには長めの持ち手を、しかもチェーンで、と言う細かい配慮も。
そして、通常は主にアクティブウエアに使われるナイロンのマイクロファイバーを使用しつつ、アルベールのシグネチャー・スタイルと言えるカクテルドレスに仕上げた、Super Tech - Super Chic グループ。地球に優しい染料を使用し、また1年を通じて着られるのが魅力です。
そして、ホームウエアの進化系、プリントのパジャマやおしゃれなトラックスーツを含めたSwitch Wearグループ。ルックを完成させるのは、パンプスに取って代わるポインテッドのスニーカーや、ラインストーンまたはイミテーション・パールの大振りなジュエリーなど。
各グループは、既にリリースされたMy Bodyグループから順に、数段階のドロップでオンラインで販売されていきます。AZ Factoryのサイトはもちろん、マルチブランドのe-shopでは、Net à PorterFarfetchが限定色も含めてのセレクトを展開し始めました。

こんな革新的なウエアの一連ももちろんですが、なんと言っても私たちの気分を高めてくれるのは実話に基づいてと言うイントロからスタートし、25分に及ぶThe Show Fashionのビデオ。 「改めてファッションにフォールインラブする必要性を感じた」「ファッションは今の時代にマッチするのか?大きくイエス!」と言うアルベールの語りや、時には映画仕立てのショートストーリーを挟み、まるで放送局のスタジオからのバラエティー番組生中継のように編集されたビデオは、何度見ても飽きません。番組のスペシャルゲストは、女優のアミラ・カザール。映画「君の名前で僕を呼んで」でティモシー・シャラメの母親役を務めた彼女に向かってアルベールが「僕の名前で僕を呼んだ?」と問いかける一幕もあり、彼のユーモラスなキャラクターを改めて感じられるのは嬉しい限りです。最後のシーンで感動してありがとう!を連発するアルベールの姿と交錯するのは、アナ・ウインターやマーク・ジェイコブズを始め、世界各地からのファッション界のアイコンたちのメッセージ。一視聴者としての私も、思わず声を上げてしまいました。「お帰りなさい、アルベール!」

Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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