ルイ・ヴィトン氏に捧げられた、200のトランクについて、知っておきたいこと

ルイ・ヴィトンの創始者ルイ・ヴィトン氏の生誕200周年を記念し、ゲームアプリや小説のローンチも含めた複合プロジェクトとして昨年スタートした、LOUIS 200。この一環として8月以降世界各地のルイ・ヴィトン店舗のウィンドウでプレビューされたトランクの数々がパリで一堂に集められ、「200 TRUNKS, 200 VISIONARIES: THE EXHIBITION」と題された展覧会で3月6日まで公開されている。200点のトランクの作者たちは、現代アート、音楽、建築などのカルチャー全般、そしてスポーツ、科学、慈善活動まで、ジャンルを超えて世界から選ばれた、先見の明がある200人。彼らに与えられた唯一の基準、いわば無垢なキャンバスは、メゾン創立当時のトランクの原型に限りなく近い、「50x50x100cm」というプロポーションでした。200の参加者(またはユニット)たちがこの“トランク”に施したのは、それぞれの自由な解釈。LEDスクリーンや絵、または別の手法で覆ったり、内部に細工を仕掛けたり、デザインで直方体を解体・再構築したり、果てはあえて物理的には外枠を取り払って意味深い内側のオブジェによってトランクの存在を強調したり、その方法は三者三様です。

店舗のウインドウでは映像や写真のみで紹介されてきたトランクの実物が披露されたのは、今回がはじめて。しかも会場は、パリ郊外アニエールのアトリエ横に1880年に建てられ、当時はルイ自身が住まいとした、ヴィトン家の邸宅です。その後も改装・拡張されつつ常に機能してきたアトリエの一部は、2015年にエキシビション・スペースとしてオープンしました。本展ではアール・ヌーヴォー様式の調度品が今でも保存された邸宅のドアから入り、クラシックな階段を上り、そして上階のモダンな通路を渡って展示室へ。パリでしか体験できない、短いながら特別なこの行程は、過去から現在へ、と言う点でとても意味深く、心が躍りました。そして形は一緒ながら動と静、縦と横、ハイテクとアナログ、と見せ方が異なるトランクの一連の配置は躍動感に溢れ、まるでワンダーランド!しかも、この機にルイ・ヴィトン氏にオマージュを捧げた200人は必ずしも著名人では無いだけに、彼らのバックグラウンドや出品作のコンセプトについて読むと(Louis Vuitton公式サイト参照)、知的好奇心が刺激されました。写真では、特に私が面白いと思った数点をご紹介しています。

昨今ではコラボレーション、アニバーサリー、社会貢献と色々なきっかけ、目的による多角的プロジェクトが多くのメゾンから発信されていて、時にはその複雑な内容を把握するのが難しい程。しかし、このLOUIS 200には驚くほどの一貫性があり、詳細を知るのが楽しく感じられます。また旅というトランクの本質を体現すべく、本展は今後1年弱を通じてニューヨーク、東京、ロンドンをはじめ世界数都市を巡回する予定。これまで200人が報酬を受け取りつつルイヴィトンに還元した額は、クリエイションをサポートする15の非営利団体に寄付されました。言い換えれば、参加者全員が一つの目的に共鳴し、無償で作品を提供したのです。またトランクの一連は、展示ツアーを締めくくる年末にはサザビーズでのオークションへ。収益はすべて、資金に欠けるアーチスト(または集団)を支援するため、同社による奨学金プログラムに充てられるそうです。経済援助の仕方もクリエイティブな「200 TRUNKS, 200 VISIONARIES: THE EXHIBITION」。日本上陸はいつになるか、要チェックです。

Text: Minako Norimatsu

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ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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