一年中着たい、イタリアの老舗【ロレッタ・カポーニ】の手刺しゅうドレス
ミュゼからトラットリアまで、フィレンツェに行く楽しみは数あれど、私が必ず寄るのは昔ながらのリネンやナイティのショップ。中でも歴史が感じられる店構えや豊富な品揃えにおいてベストなのが、ロレッタ・カポーニ(Loretta Caponi)です。
手刺しゅうハウスリネンのメゾン「ロレッタ・カポーニ」の始まり
1927年にフィレンツェ郊外に生まれた初代、ロレッタ。子供の頃から家業の刺しゅう工房を手伝ううちに、彼女がデザイン・制作するハウスリネンがイタリア各地で評判になり、ビジネスのセンスでもって当時では珍しかった展示会を開いたとか。そして未来の夫、画家のディーノ・カポーニを通じてアート界の顧客を増やしてデザイン、サイズともにカスタムメイドの彼女の作品は、部屋着にも広がっていきました。さらにネットワークは上流社会にも広まり、1967年にはフィレンツェ市内にアトリエとブティックを構えて正式に創業。ブティックには、100以上の色を使って19世紀の技術に則ったサテンステッチを駆使したハウスリネンはもちろん、部屋着に溢れていました。ストライプや花柄といったプリント、しかもカラフルな部屋着は当時としてはとても珍しかったそうです。
さらに先見の明があった彼女は、子供服にしか使われていなかったスモック刺しゅうを大人の女性服にも適用。こうしてロレッタ・カポーニのシグネチャー・ドレスが誕生したのです。その後メゾンはハウスリネンとウェアの両面で発展し、顧客にはヨーロッパの王室やアメリカの富豪も数えるように。ちなみに映画『羊たちの沈黙』(ジョナサン・デミ監督・'91年)でアンソニー・ホプキンスが着ていたシルクのパジャマとガウンは、ロレッタ・カポーニのもの。8年前に創始者が帰らぬ人となった後は、娘のルチア・カポーニがクリエイティブ・ディレクター、孫のグイドがビジネス面のディレクターとして、3代に渡るファミリー・ビジネスが続いています。
「ロレッタ・カポーニ」のモダンなバカンス・スタイル
こんな歴史を知った上で訪ねたいのが、元ピアノの倉庫を改装して30年ほど前にオープンした、アトリエとブティック。天井のフレスコ画が美しい850㎡のスペースには、絵画やアンティークのオブジェも無数に飾られ、まるでフィレンツェの旧家のお屋敷かと見紛うほど。ロレッタ・カポーニでは3年前にプレタポルテのラインもローンチし、スモックや刺しゅうのドレスやトップスは、もはや部屋着以上の毎日着たいモダンなウェア。ここでは手仕事の温かさが感じ取れる、愛おしい一点が見つかります。
Loretta Caponi
Via delle Belle Donne 28/R 50123 Florence
https://www.lorettacaponi.it
*ロレッタ・カポーニはオンラインショップで購入可能。一部ドゥロワーでも取り扱いあり。クチュール・ランジェリーのドレス875€〜。コットンのドレス545€〜、コットンのトップス545€ すべててイタリア製で、熟練した職人によるハンドクラフト。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/