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【ルイ・ヴィトン】でファレル・ウィリアムスが掲げる「LVERS」とは?
ファレル・ウィリアムスが掲げる、LVERSとは?
メインコレクションとしては早3シーズン目(クルーズ、プレフォールも数えると5シーズン目)を迎えた、ファレル・ウィリアムスによるルイ・ヴィトンのメンズ。6月18日、2025年春夏コレクションのショーは、パリ7区ユネスコハウスの庭で開かれました。
7月26日に予定されているパリ五輪の開幕を控え、去る6月のファッションウィーク(メンズ、続いてオートクチュール)では、複数のメゾンやデザイナーがそれぞれの解釈で、スポーツを通じての世界の団結を示唆しました。一方他メゾンとは一線を画するファレルは今季、デビューコレクションから掲げているスローガン「LVERS」をさらに掘り下げ、コスモポリタンとしてのメッセージを形にしました。Louis Vuittonのイニシャルとラブを組み合わせ、“ラバーズ”と読ませるこの造語はすでに定着し、LVERSコミュニティを広げています。
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フィナーレでのファレル。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
今回の会場のチョイス、ユネスコハウスはコレクションのテーマ Le Monde est à vous(世界はあなたのもの、の意)にぴったりでした。1958年に、世界平和を願いカルチャーを通じて人類を一つにするという目的で建てられた、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の本部だからです。ランウェイが設置された庭には、鋼で地球儀を模った巨大なオブジェの背後に、各国の旗が翻ります。ショーに先駆けて公開された“プレリュード”の動画はユネスコの建物内で撮影され、未来を担う子供たちが多様性と明日の世界をテーマとした講義に耳を傾けるというストーリーで展開されています。
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会場となった、ユネスコハウスの庭。建築家エリック・ライツェルが構想したスチールのグローブと、世界の国旗が象徴的。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
カラーパレットの着想源は、多様な肌の色
ファレルによる、多様性の大胆なほどストレートな解釈は、さまざまな肌の色をルックに置き換えること。82ルックのうち最初の10体ほどは、オールブラックです。単色なだけに、マット/光沢、と素材による質感の違いがルックに表情を与え、パールやクリスタル刺しゅうのディテールやテーラードシルエットの完璧さが際立ちました。またシアーな素材は、モデルのスキンカラーをあらわに。赤や白、グリーンの差し色を配しつつ黒が続いた後、次第にカラーパレットはダークブラウンに移行し、ライトブラウン、ベージュ、とスキンカラーのトーンで展開していきます。途中チャコールグレーやグレーを交錯させ、後半ではバイカラーやハーフトーンのマルチカラーに。
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ルイ・ヴィトンの2025年春夏メンズ・コレクションのファースト・ルックは、黒のベルベットのスーツ。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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ファーストルックでは、「スピーディ」のモノグラムもブラック・オン・ブラック。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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単色使いのルックでは、「ショッパー」もマッチング・カラーで。スーツは“前章”動画に演出した子供たちの、外交員然としたルックを思わせる。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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タータン・チェックにも、よく見るとダミエが配されている。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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ピクセル化されたチェックのスーツに合わせた「スピーディ」の新色は、陽の光で色あせたかのようなピンク。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
進化するダミエ、ひと捻りしたスポーティ・タッチ
本コレクションで色彩の増殖が自然に展開されているのは、ファレルがダミエを巧妙に使っているから。彼がファーストコレクションから提案しているダモフラージュ(ダミエ×カムフラージュ)の進化形として、市松模様をピクセルに見立てたグラフィック・パターンは、マルチカラーでスネークスキンや世界地図にと変化を遂げました。これはエール・アフリク(Air Afrique)なるクリエイティブコレクティブとのコラボレーションの賜物です。特に目を惹く新色、グリーン×ブルーは、エール・アフリクというネーミングの源である同名のエアライン(2002年にクローズ)のレガシーを引き継いだ、シグネチャーカラー。またダミエはチェックにも見え隠れするほか、ジャカード織りでは陰影を演出します。
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ダモフラージュの進化形、ダミエをピクセルに見立ててスネークスキンを表現したスネーク・オ・フラージュ。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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こちらもダモフラージュの進化形、ダミエのピクセル風な使い方はここでは世界地図に落とし込まれた。名付けてマップ・オ・フラージュ。Photo: Courtesy of Louis
Vuitton
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デニムのダミエもビジューも。マルチカラーで。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
コレクションを通じて読み取れるアピールのうち、ひとつはルイ・ヴィトンの真髄である、旅。フライトジャケットはさまざまなバリエーションで提案され、飛行機の形のチャームやジュエリーも添えられました。ユネスコを舞台に思い描いた“世界各国の交流”には、LVERSコミュニティの”外交員”をイメージしたテーラードスーツを。一方スポーティ・タッチは、スポーツウェアに終始するよりも、機能性や着心地で表現。とはいえ所々には、パール刺しゅうで洗練されたセットアップに昇華したトラックスーツや、サッカーボールを模ったバッグ、サッカーユニフォーム風のトップスなども織り交ぜました。サッカーをフィーチャーしたのは、国際レベルで多くの人々が団結するスポーツだから、と焦点ははっきりとしています。
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サッカーのユニフォーム風のトップスに、まるでチーム名のように記された言葉は、他でもないLVERS。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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サッカーボールの展開図のようなパターンとモノグラムを掛け合わせた、”LVERS United”ジャケット。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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バックステージにて。左のジャケットはエンボス加工モノグラム。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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ミニサイズのソフトトランク。Photo: Courtesy of Louis Vuitton
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バックステージにて。手前のバッグは総パール刺しゅうの「ショッパー」、奥は今回発表されたマルチカラーのダミエ
太陽の光をボトルに詰めた、LV ラバーズ
またショーに先駆けて6月半ばに発売されたルイ・ヴィトンの新しいオー ドゥ パルファンも、名付けてLV ラバーズ。ファレル・ウィリアムスがはじめて香りのプロジェクトに関わり、メゾンのマスター・パフューマーであるジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードとともに開発したメンズフレグランスは、ファレルが“愛と生命の象徴”と考える太陽の光をテーマとしています。あたたかさ、活力、至福感、そしてきらめきを体現した成分は、爽やかかつ上品なベルガモット、グリーンノートを発するガルバナム(セリ科の植物の根・茎に切り込みを入れると流れ出る樹脂から採取)、そしてウッディーなシダー。アクセントにはほんのりとスパイシーなジンジャーと、甘美なサンダルウッドが加えられました。女性も楽しめる香りです。
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ファレル・ウィリアムスとのブレインストーミングを通じて、ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードは光合成を香りで表現。躍動感に溢れ爽やかかつあたたかみのあるフレグランス、LV ラバーズが完成した。右はダモフラージュのトラベルケース。Photo: Minako Norimatsu
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パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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