こちらの記事に引き続き、ロンドンファッションウィーク春夏、第二弾レポートをお届けします。
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【JW アンダーソン】【アーデム】……ロンドン ファッションウィーク25年春夏を追跡!
こちらの記事に引き続き、ロンドンファッションウィーク春夏、第二弾レポートをお届けします。
素材を絞り込んだ【JW アンダーソン】の、ミニマルで完璧なシルエット
毎回新しいアプローチを見せてくれるJW アンダーソンは今回、素材を4つに絞りました。まずはメゾンのヘリテージである上質のカーフレザー、そしてシルクサテン、カシミヤニット、遊び心としてはシークエンス。これらに加え、唯一の装飾的要素としてはレースが加えられましたが。
レザーでは、彼がここ最近ロエベでも探求している彫刻のような型作りをシンプル化し、完璧に円形のマイクロミニスカートを提案。シークエンスはボックスシルエットかハンカチを繋ぎ合わせたかのような形で、いずれもシンプルなミニのワンピースで。ニットでは編み目を拡大することでジョナサン特有のユーモアが表現されました。シルクサテンはドレープを効かせたワンピースからスウェットシャツ、ハーレムパンツまで、まったくタイプの異なるさまざまなアイテムに。それらは巧みにクロスオーバーし、単に二つの素材を組み合わせたワンピースもある一方、例えばカンガルーポケットをつけたニットのワンピースは同じシルエットでシルクサテンでも展開。だたしニットの編み地から前者と同じ位置に配したポケットまで、すべてがプリントのトロンプロイユです。素材を絞ることでバリエーションや形を追求するというジョナサンの新しい試みは、見事に成功したようです。
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JW アンダーソンの最新コレクションでコンセプトがぎゅっと凝縮されているのが、このカーフレザーの円盤スカート。Photo: Courtesy of JW Anderson
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ジョナサン・アンダーソン流ミニマルは、今回の厳選された素材のひとつ、シークエンスで仕立てたマイクロミニのボックスシルエットワンピース。Photo: Courtesy of JW Anderson
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もうひとつ、本コレクションを構成する素材はカシミヤニット。足元もミニマルに、すべてのルックは素足にころんとしたショートブーツ。Photo: Courtesy of JW Anderson
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ニットのルックで注目されたのが、ジョナサンが最近提唱する“ズームイン・ズームアウト”のコンセプトによる巨大な編み地。Photo: Courtesy of JW Anderson
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ラストルック、シルクサテンのマイクロミニドレスには、20世紀のアートムーブメント「ブルームズベリー」で活躍した批評家、クライヴ・ベルによるアートとデザインに関するエッセイの抜粋がプリントされている。Photo: Courtesy of JW Anderson
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バイカージャケットのディテールと安全靴をフュージョンさせたかのようなショートブーツは、後ろのジッパーを外して履くのがミソ。Photo: Courtesy of JW Anderson
【アーデム】はクィア・カルチャーへの共感をロマンチックに表現
毎回歴史上の人物やグループ(大抵はあまり知られていない、コアな選択)をミューズとし、ストーリーテリング的なコレクション作りをする、アーデム。今回のインスピレーションは、20世紀初頭に活躍したレズビアンの詩人・作家、ラドクリフ・ホールによる小説で、当時スキャンダルを巻き起こした「The Well of Loneliness」でした。
自作の小説の主人公同様、彼女が常に男装していたことから、自然とコレクションはマスキュリン&フェミニンに。サヴィルロウのサルトリアルのアトリエとのコラボレーションによるスーツでは、ダンディなグレーや黒からピンク、ミントグリーン、そして花のモチーフが織り込まれたピンストライプ、と素材でフェミニンさを取り入れました。足元もいずれもウィングチップながら、大きなタッセルやボウをあしらって、女性らしさ、男性らしさをミックス。そして20世紀初頭を思わせるフラッパードレスはあくまでデリケートに、装飾的に展開しました。
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お決まりの会場、大英博物館の中庭とアーケードを使って開かれた、ショー。フィナーレではマスキュリンとフェミニンがいかに交錯し、フュージョンしているかが顕著。Photo: Jason Lloyd Evans
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マスキュリンとフェミニンの共存をモノトーンで展開した3ルック。足元にも注目。Photo: Jason Lloyd Evans
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このルックではランジェリー・タッチとフォーマルウェアを組み合わせた。大きなボウがついたウイングチップは本コレクションのシグネチャーアクセサリー。Photo: Jason Lloyd Evans
カムバックした【ネンシ・ドジョカ】と【トーガ】
1年のブランクを経てロンドンファッションウイークに復活したのは、ネンシ・ドジョカ。今回のショーは、カルバン・クラインとのコラボレーションによるアンダーウェア(すでにカルバン・クライン公式サイトで販売開始)の発表の機会ともなりました。同ブランドにとってはヴェロニカ・レオーニのデビューとなる来年2月のランウェイに先駆けてのバズであると同時に、ブランドやグループを超えて若手デザイナーを支援する新しいファッション界のあり方をも示しています。
本コレクションではストッキングのようなシアなストレッチ素材やシフォンを多用しつつ、ニットやサテンも多用。シグネチャーアイテムのブラトップやスリップドレス、ボディスーツは健在ですが、立体的な花モチーフやラッフルを駆使したドレスなど、カクテルドレスとして着られるものも増えたようです。また色合いではこれまで多用してきた黒やベージュ、ボルドーに加えてイエロー、ピンク、ブルーとビビッドな色合いも差し込まれ、これまでの退廃的からシフトしてポジティブなムードになりました。
そして4年ぶりにショーを開いたのは、古田泰子さんによるトーガ。“Labor, Order, Humor”という彼女が掲げた3つの言葉の中でも特に顕著だったのは、ユーモアでした。ドレス仕立てのトレンチコートやらラッフルを加えたパンツ、オーガニックなシェイプを袖口や襟にあしらったVネックのベスト、安全靴のつま先保護のようなメタルピースをつけたポインテッドシューズなどでは、一見ベーシックなアイテムをひとひねり。罫線チェックのセーターやブロックチェックのセットアップは昔懐かしい感じを与える一方、ブルーとバーガンディといった突飛な色合わせや、ミニスカートの裾からシャツがはみ出たプロポーション、ベーシックなシャツと手の込んだオブジェのようなスカートの組み合わせで、エキセントリックには転ばないものの、通常の概念を覆すルックに溢れていました。
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トーガのランウェイより、ワークウェアをひとひねりしたルック。Photo: Courtesy of Toga
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トーガでは、構築的なスカートをベーシックなシャツと合わせて見せた。Photo: Courtesy of Toga
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パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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