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バレニア レザーを香りに再解釈。【エルメス】の最新フレグランス

最高級カーフの感触を、香りに再解釈

エルメスから、レディスの新しいフレグランスが発表されました。エルメス香水部門のクリエイティブディレクターであるクリスティーヌ・ナジェルが提案する香りは、名づけてバレニア。メゾンのレザー製品に使われる、とろけるように柔らかいカーフ(仔牛革)の名称です。クリスティーヌがその触り心地から香りに置き換えたのは、肌に密着し、センシュアルで心地よい、と言う点。10年間に渡る思いとリサーチの末に完成した香りはデリケートで軽やか、それでいて力強い香り。とてもオープンで魅力的で、つかみどころがないけれど主張が強い女性の肌に触れると自己表現を促す、そんな香りなのです。(クリスティーヌの語りはこちらのビデオで。)

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「バレニア」はオード パルファム(100mlまたは60ml)、リチャージも可。Photo: © Bastian Achard

往年のトップモデル、マルゴジア・ベラを起用した、「バレニア」のキャンペーンビデオ

クリスティーヌが語る、エルメスならではのシプレ・ノート

香りに昇華された「バレニア」は、エルメス初のシプレ・ノート。クリスティーヌはこう語ります。「10年ほど前にエルメスに入った時から、いつかシプレの香りを作ることになることはわかっていました。なぜなら、私が最も好きな香りの構造だから。シプレが好きな人は、一生その好みを変えません。それは私にとって、タイムレスな構造。確実な選択をする女性のための香りなのです」。ちなみにシプレは、柑橘系、フローラル系と並んで代表的な香りのタイプの一つ。ただ前者2つと違って一つの方向性ではなく、フレッシュでいて甘く、しかもセンシュアル、と多面的なのがシプレの抗え難い魅力です。

「バレニア」の具体的な構成で、まずシトラス・ノートのためにクリスティーヌが選んだのは、シチリア産の青みが強いベルガモットでした。一方フローラル・タッチにはジャスミンではなく、マダガスカル産の小さな花、デリケートで個性的なバタフライ(ジンジャー)リリーを。これが女性用のフレグランスに使われるのは初めてだとか。そしてウッディ・ノートのために、一般的なオークモスの代わりに彼女が試みたのは、焙煎オーク材。まるでラム酒のように包み込むような温かみのある香りです。またミステリアスな雰囲気を醸し出すパチュリは、2つの方法で使用。彼女は昔ながらの抽出液のほか、バイオテクノロジーによってナチュラルな微粒子を取り出し、パチュリに深みを与えました。最後に個性的なシグネチャーとして加えたのは、ミラクルベリー。アフリカのマジシャンが常備していると言う話を小さな頃にきいたおとぎ話で覚えていた彼女が実際にこの果物を手にしたのは4年前だったそう。ドライ・アプリコットにも似たその果汁の匂いに、クリスティーヌはとても惹かれたのでした。

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エルメス香水部門のクリエイティブディレクター、クリスティーヌ・ナジェル。「バレニア」のプレゼンテーションにて。Photo: © Bastian Achard

ブレスレットから香水ボトルへ

フィリップ・ムケによる「バレニア」のボトル・デザインのインスピレーションとなったのは、コリエ ド シアン(Collier de Chien)。レザーにピラミッド型のメタル・スタッズをあしらって1920年代にデザインされたコリエ ド シアン(犬の首輪)は、その後ベルトやバッグ、ブレスレットにと展開されました。さらに意味深い「バレニア」を擁する澄んだ透明の容器では、メタルのスタッズはそのままにブレスレットのシェイプは楕円形のボトルの緩やかな曲線で表現。

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Photo: © Bastian Achard

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「バレニア」はHをアールデコ調のタッチでスタイリッシュなグラフィックデザインにしたボックス入り。Photo: Minako Norimatsu

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「バレニア」はHを刻印した石けんでも展開。Photo: Courtesy of Hermès

プレゼンテーション会場は、モダニズム建築の珠玉

「バレニア」ローンチングに際して開かれたプレゼンテーションの会場となったのは、フランス北部の街リールの郊外にある、1932年建造のヴィラ・カヴロワ。モダニズム建築の巨匠、ロベール・マレ=ステヴァンが直線と曲線を駆使して設計した邸宅です。オーク材はもちろん木ではマホガニー、産地も色あいも異なる数種の大理石、そしてインダストリアル系ではコンクリート、メタル、スティール、ガラスと言ったさまざまな素材を使いつつシンプルで機能的、しかも感情に訴えるデザインが「バレニア」に呼応します。エルメスでは新作のローンチングごとに単にエピソードや外観ではなくその真髄が作品に呼応する場所が選ばれますが、ヴィラ・カヴロワは偶然にも「バレニア」を体験するのにうってつけの環境でした。

ゲストたちはヴィラに到着するとまずはキッチンでシェフ、アレクサンドル・ゴーチエによるスイーツを堪能した後、この日のためにエルメスの小物が配されたサロンやダイニング、寝室、キッズルームなどを見学し、バスルームへ。エレガントなカッラーラ大理石を基調とし、ドレッシングも兼ねた60M2を超える広々としたバスルームは、バスタブはもちろんジェット水流シャワーやメモリが壁に内蔵された体重計を備え、当時としては超モダンなつくり。鏡台に座ると、「バレニア」ウーマンを綴ったポエムの朗読が聞こえてきました。

 

「バレニア」はオード パルファム(100mlまたは60ml、リチャージも可)とHが刻印された楕円形のパフュームドソープでの展開。

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ヴィラ・カヴロワは2015年より国の歴史的建造物となっている。Photo:© Bastian Achard

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一般今回されているヴィラ・カヴロワへはパリからリールまでTGVで約1時間。駅から車で約20分。https://www.villa-cavrois.fr/en

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「バレニア」のプレゼンテーションではマレ=ステヴァンの家具に、エルメスの小物が配された。Photo: © Bastian Achard

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直線と曲線のバランスが見事な、ヴィラ・カヴロワのキッチン。Photo: © Bastian Achard

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バッグ「バーキン」の素材は、いわずとしれたバレニア・レザー。ヴィラ・カヴロワにて。Photo: © Virgile Guinard

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ヴィラ・カヴロワのキッズ・ダイニングルーム。Photo: © Bastian Achard

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ヴィラ・カヴロワのバスルーム。Photo: © Bastian Achard

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ヴィラ・カヴロワの歴史とデザインの詳細を綴った本、Un Château Moderne (Éditions du Patrimoine刊)。

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Un Château Moderne (Éditions du Patrimoine刊)より

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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