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【モダンデザインの最先端】ヘルシンキの公園からホテルまで
フィニッシュ・デザイン・スタジオで、北欧デザインを網羅。
真冬到来。友人の田舎の家で過ごす、暖炉とクリスマスツリーを囲んでの週末のために、プレゼントのアイディアを探っているところです。買おうとしているのは、フィニッシュ・デザイン・スタジオの素朴な木製のゲーム。このe-shopでは“北欧のハピネス”をテーマに家具からテーブルウエアまでを、ブランドで言うと「アルテック」から「ヘイ」まで、北欧デザインのベストを集めています。木製ゲームのPELATA(フィンランド語でLet’s Playの意)はこのe-shopローンチ20周年を祝うコレクションションで、フィニッシュ・デザイン・スタジオ初のオリジナル・プロダクツ。9月半ばに訪ねたヘルシンキ・デザインウイークで発表されたのを思い出しつつE-shopを見ているうちに、気分はすっかりフィンランドへ。9月にメモったリストをもとに、妄想週末旅行を計画してみました。冬時間で日照時間が極度に短いものの、クリスマスの街は綺麗だろうな、と。
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Finnish Design Studio のPELATAより、ボーリングのピン。日本からもオーダー可能。Photo: CHikako Harada
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Finnish Design Studio のPELATAより、バックギャモン。日本からもオーダー可能。Photo: Chikako Harada
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Finnish Design Studio のPELATAより、輪投げ。日本からもオーダー可能。Photo: Chikako Harada
ホテルから公園まで、フィンランド・デザインシーンの現在
まずは、ホテルの予約から。半島の先にに入江や小さな島々が入り組んだヘルシンキでは、マーケットスクエアがあるカタヤノッカ埠頭が、港町としての歴史的上重要な地区。この辺りは現在大改装が進んでいて、旧港のインダストリアルな施設は郊外に移転した後、新しいレジャー地区となりつつあります。新しい建築&デザインミュージアムもここにできる予定だとか。既に完成している新しいランドマークは、アンティネン・オイバ建築事務所のデザインによるカタヤノッカ ピア 4です。90年代より木工建築が奨励されているこの国の象徴として80%木でできたビルは、大手林産企業ストラ・エンソの本社やカフェ、レストランと並び、4フロアに164室が広がるホテルも擁しています。エントランスは巨大な円形のベンチと吹き抜けが圧巻。部屋はクリーンでミニマル、かつ温かみのある典型的北欧デザインで、サロンなど公共スペースにはアルヴァー・アールトによる椅子やテーブルも点在。客室からは大きなガラス張り窓からバルト海・フィンランド湾と行き来する船が眺められ、レストランがあるルーフトップからはさらに街中が360度見渡せます。
Katajanokka Pier 4 Hotel
Katajanokanlaituri 4, 00160 Helsinki
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フィンランド湾側から見たKatajanokka Pier 4 ホテルの外観。Photo: Courtesy of Katajanokka Pier 4
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Katajanokka Pier 4 ホテルのラウンジ。Photo: Courtesy of Katajanokka Pier 4
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Katajanokka Pier 4 ホテルの客室。Photo: Courtesy of Katajanokka Pier 4
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Katajanokka Pier 4 ホテルのカフェ。Photo: Courtesy of Katajanokka Pier 4
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Katajanokka Pier 4 ホテルのラウンジに配された、アルヴァー・アルトの椅子。Photo: Courtesy of Katajanokka Pier 4
エコ建築と共に国が力を入れているのが、未来を担う世代のデジタル教育。デジタルを正しく安全に使って、より良いライフスタイルを目指すと言う方針です。この一環として、30年前から存在する公園をリノベーションしてオープンしたのが、カタヤノッカとは反対、街の西端にあるルオホラハティ・プレイグラウンド。子供用絵本作家、リンダ・リウカスの考案により世界で初めてコンピューターをテーマとした公園では、子供たちが遊びながらデジタル・ワールドを学ぶことを目的としています。カラフルでグラフィックな公園は単にデジタル・デバイスに似せたデザインではなく、例えばキーボードを模したステップではキーでのコマンドを学び、トランポリンではプログラミングを試せる、楽しい作り。アルゴリズム、果てはコーディング、プログラミングとは何か、をデザイン・コンシャスな大人も楽しめるレベルで、ヘルシンキではこれを雛形に、今後も同じようなテーマの公園を増やしていくそうです。
Ruoholahti Playground
Laivapojankatu 8, 00180 Helsinki
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9月のデザインウイーク中のプレビューでは、滑り台をトライ。
モダニスト・デザインの父、アルヴァー・アールトについてお勉強
前述のアルヴァー・アールトは、この国を代表する建築家・家具デザイナー。モダニスト・デザインの父とも言われています。パリで開催中の展覧会「ピエール・ポーランのテーブル」を10月に取材した際、同デザイナーのヘリテージ管理や展覧会企画をするポーラン・ポーラン・ポーランのファウンダーでポーランの息子、バンジャマン・ポーランは、面白い逸話を披露してくれました。ポーランによる有名なエリゼ・テーブルの天板と足が一つに繋がっているようなデザインは、アールトの扇型の“ファンレッグ“が着想源だとか。ちょうど9月にヘルシンキでアールトのデザインスタジオと自宅を見たばかりだったので、納得できました。
1920年代から半世紀もの長いキャリアをもつアールトは、主にフィンランドで活動。図書館、ミュージアム、レジデンス、サナトリウムなど数多くのビルをデザインしましたが、海外では家具の方が有名です。オーガニックなフォルムの家具や照明器具は美しいだけでなく、スチールやガラス、木では合板などインダストリアルな素材の使用が当時としては革新的でした。また前述のファンレッグをはじめ、数々の画期的なテクニックも開発し、他界後50年近く経った今でも現代のデザイナーに広く影響を与えています。
アルヴァー・アールトのアイコニックなデザインを作り続けているのは、アールト夫妻が1935年に創業した家具メーカー、アルテック。またブランド公認のヴィンテージショップ、アルテック・セカンドサイクルではレアなピースも見つかります。そしてあまりに有名なアールト・ヴァーズ(花瓶)は、アルテックのほか、ガラスメーカーのイータラでも生産し、今年は限定盤も発表しました。曲線を駆使した形は女性のドレスを着想源としているそうですが、この国では一般的な名字“アールト”がフィンランド語で“波”を意味することから、波を想起させるとも言われています。彼の作品と世界観は、一般公開されているフィンランド市内のジ・アールト・ハウスとスタジオ・アールトで。
こんな風にデザインにフォーカスしたヘルシンキへの旅では、エコフレンドリーな建築コンセプトと木を素材としたデザイン両方の可能性を感じ取れたのでした。
The Aalto House
Riihitie 20, 00330 Helsinki
Studio Aalto
Tiilimäki 20, 00330 Helsinki
Artek Helsinki
Keskuskatu 1 B, 00100 Helsinki
Artek 2nd cycle
Pieni Roobertinkatu 4-6, 00130 Helsinki
Iittala
Pohjoisesplanadi 23, 00100 Helsinki
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The Aalto Houseのリビングルーム。Photo: Minako Norimatsu
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The Aalto Houseにて。手前が、アルテックとイータラが作り続けているアールト・ヴァーズ。Photo: Minako Norimatsu
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The Aalto Houseにて。Photo: Minako Norimatsu
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The Aalto Houseのキッチン。Photo: Minako Norimatsu
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The Aalto House,庭側からの外観。Photo: Minako Norimatsu
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Studio Aaltoでは照明器具の一連を展示。Photo: Minako Norimatsu
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Studio Aaltoにて。シート、手すり共オーガニックなシェイプで最もアールトらしいデザイン。Photo: Minako Norimatsu
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Artek 2nd Cycleの内観。Photo: Minako Norimatsu
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Artek 2nd Cycleで、ピエール・ポーランに影響を与えたと言うファンレッグのスツールを発見。Photo: Minako Norimatsu
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パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/