旅行シーズン到来!今回はパリからちょっと足を伸ばしての旅に最適な5つ星ホテルを紹介する。3地方、タイプの違う3つの宿だ。

行ってみたい! フランスの地方の特別な宿3件
旅行シーズン到来!今回はパリからちょっと足を伸ばしての旅に最適な5つ星ホテルを紹介する。3地方、タイプの違う3つの宿だ。
周りはまるで映画のセットのよう。12世紀のお城がホテルに
まずはブルゴーニュ地方で12世紀建造と歴史のあるお城を改装した5つ星ホテル。2024年のミシュランのベストホテルガイドにもリストアップされている、「シャトー・ドゥ・ヴォート・ドゥ・ルニ(Château de Vault-de-Lugny)」だ。水路に囲まれた要塞の門をくぐると、広大な前庭で鴨の家族が一列に並んで歩いているのが目に入る。受付で出迎えてくれるのは、オーナーのマダム自身。家族経営だから、知人の家を訪ねたかの様に感じられるのだ。3つのスイートを含めた16部屋は、ほとんどがクラシックなインテリア。重厚な雰囲気のバーの向こうには、まるで洞窟のようなプールも。
ここにはミシュラン一つ星レストラン、「ル・ヴァルシアン(Le Valucien)」を目当てにやってくる客も多い。三方がガラス貼りだから、城の後ろに広がる40ヘクタールの庭の真ん中で食事をしているような気分を味わえる。シェフはモーリシャス島出身、ヨーロッパ各地で経験を積んだフランコ・ボワネー。庭では140種類ものオーガニックの野菜や果物を栽培しているし、秋にはオーナー夫妻の愛犬がトリュフを採取。また近くには牧場やマスの生息で知られるクザン川が。だからここの料理は新鮮な産地直送素材を使いモーリシャスのスパイスを添えた、ユニークな味わいだ。オプションのレジャーは、まるで映画のセットのような中世の村や、サント=マドレーヌ大聖堂、フォントネーのシトー会修道院(共にユネスコ世界遺産)への小旅行から、シャブリやボーヌのワイナリーでのワインテイスティング、ハイキング、釣りまで。ちなみにマスを釣ったらシェフが調理してくれるとか。
Château de Vault-de-Lugny
11, rue du Château 89200 Vault de Lugny
レストランも含め、4月から11月のオープン。チャ―ミングな屋根裏部屋349ユーロから、ハイシーズンのキングルーム964ユーロまで、と宿泊料は幅広い。パリから車で2時間半、電車では市内Bercy駅からAvallonまで約3時間。駅からタクシー。

巨大なシカモア(セイヨウカジカエデ)の木がある、前庭。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

前庭で和む、鴨の一群。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

ロマンティックな内装の部屋、Vauban。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

城の後方に広がる庭。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

客室とレストランをつなぐスペースには、ルイ13世時代のキッチンがそのまま残されている。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

洞窟のようなプールはブルーやグリーンにライトアップされ、幻想的。ジャクジーも併設。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

全面ガラス貼りのレストランでのディナーは、火曜、水曜、祭日以外。土、日はランチも。庭で放し飼いの羊が和むのが見える。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny

ル・ヴァルシアンでのディナーは、メニュー99ユーロから。Photo: Courtesy of Château de Vault-de-Lugny
プロヴァンス地方、ワイナリーの真ん中で眠りにつく
プロヴァンス地方はエクサンプロヴァンス北東部で、さまざまな楽しみを一つにまとめた「シャトー・ドゥ・ラ・ゴード(Château de la Gaude)」は、ルレ・エ・シャトーの一つ。18世紀の邸宅を改装した本棟(7部屋とスイート)と新しい別棟(10部屋)に加え、敷地内の葡萄園の真ん中には3つのロッジも。異なる客室は、それぞれの魅力を備えている。またシャペル、湧水をたたえた貯水池、庭木を整然と刈り込んだフランス庭園……と見どころは多数。葡萄園を含めると合計30ヘクタールに渡る敷地内の至る所から見渡せるのは、セザンヌが描いたことで知られるサント・ヴィクトワール山の景観だ。広大な庭では徒歩またはゴルフカーで回って、点在するコンテンポラリーアートのスカルプチャーを鑑賞する楽しみも。
チルアウトには屋外プールはもちろん、ハマムとドライサウナを備え、ヨガクラスやヘルシーな軽食も提案するスパが。施術の提案は“クリーン・ビューティ”で定評のある「オリヴィエ・クレール」か、肌細胞の再生にフォーカスしてのコラーゲン、レチノール、ビタミンの濃縮セラムがウリの「マイブレンド」だ。海抜250-400mでミクロ気候、山に囲まれていることからミネラルを多く含んだ土壌で育つ葡萄を使ったここのワインは、「コトー・デクス・アン・プロヴァンス」。ホテル内には最高品質のステンレス熟成タンクを備えたワイン醸造室もあり、ワインテイスティングも提案している。レストランは、計4件。私が試したカイセキ(Kaiseki)は日本人シェフ、カズナリ・ノダを迎え、現地のプロダクツを生かしつつ八寸から始まる本格的な京料理だ。特に白身魚と野菜が入っただし汁は、日本でも食したことがないほどの美味だった。一方ミシュラン一つ星の「ル・アール(Le Art)」はプロヴァンス料理、貯水池に面したその名も“源”を意味する「ラ・スース(La Source )」はインターナショナル・タッチのビストロ、そして「ル・カ(Le K)」はカジュアルな和食も提案するフュージョン。ここでは敷地内に全ての楽しみが揃っている。
Château de la Gaude
3959 Route des Pinchinats
13100 Aix en Provence
一泊250ユーロ〜。パリからAix en Provence TGVまではTGVで約3時間、駅からタクシーで20分。市内からは車で10分。駅、またはマルセイユ空港からの送迎サービスも。

客室の窓からのぞめるのは、洗練された、フランス庭園。Photo: ©️We On It Studio

自然光に溢れた客室は、比較的コンテンポラリーなインテリア。Photo: ©️We On It Studio

葡萄畑の真ん中にある客室は、半円形。Photo: ©️We On It Studio

テイスティングもできる、ワインセラー。Photo: ©️We On It Studio

カイセキでサーブされる、ジュレ。メニュー165ユーロ〜。Photo: Minako Norimatsu

カイセキで人気の一品、キャビアのおし寿司。Photo: Minako Norimatsu

ラ・スースのテーブル。Photo: Minako Norimatsu
ボルドー市内、アートにあふれたギャラリー・ホテル
15年に渡り、ビアリッツで大西洋に面したブラッスリーとホテルを経営していた独学のインテリアデザイナー、アニエス・ギオ。彼女がボルドー市内の元19世紀末の邸宅を改装してオープンしたのが、ジェネラス(寛大)とリュクスの造語“ジェネリュクス”をコンセプトとする、「インド(YNDO)」だ。オーナー自身の内装による12の部屋はそれぞれが異なる雰囲気で、まるでギャラリー。エレガントな建物とコントラストを成すのは、トムディクソンやユベール・ルガールと言った著名なデザイナーのコンテンポラリーな家具や照明、そしてウィリアム・ギヨンによるブロンズ枠の鏡、パピエ・ア・エートルのアートな紙のランプなどなど。若手デザイナーやアーティストのサポートも、アニエスの“家”づくりの信条なのだ。ダイニングルームで存在感を示すのは、オトバン(AUTOBAN)の既存のデザインをくるみの木で特注した“クラウド”テーブル。彼女はここでお抱えシェフによる家庭料理を楽しむ宿泊客と食事を共にすることもあり、コミュニケーションを大切にする。ちなみにアニエスはインドの延長として、近くの海岸カップフェレにラ・キャバン(La Cabane)とアパルトマンもオープンした。
YNDO
108, rue de l’Abbé de l’Epée
33000 Bordeaux
225ユーロ〜。パリからボルドー・サンジャンはTGVで約2時間15分、駅からホテルへはタクシー15分。

インドは、プチ・シャトー然とした19世紀末の建物に。Photo: Minako Norimatsu

ユベール・ルギャルによるクジラを模したソファを配したサロンでは、ティータイムやアペリティフに。Photo: Courtesy of YNDO

ダイニングルームのクラウドテーブル。キャンドルスタンドと天井から吊るしたランプはウィリアム・ギヨンの作。Photo: Courtesy of YNDO

セラミックの柱を配した客室。Photo: Minako Norimatsu

バラ窓のある客室。Photo: Courtesy of YNDO

ディナーのメニューは日替わり。Photo: Minako Norimatsu

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/