ロンドン ファッションウイーク25年春夏、【バーバリー】と【シモーン・ロシャ】の提案とは?
今年で40周年を迎えたロンドンファッションウィーク。モリー・ゴダードの欠席に関わらず、ポジティブなムードのなか、荒削りながら持ち味をより明確に打ち出し、クリエイティブなパワーが漲っていた新鋭と、シグネチャーを再考してその最新形を提案した大手ブランドに注目したい。
まずは、ロンドンといえば欠かせないバーバリーとシモーン・ロシャの2ブランドの模様をお届け!
【バーバリー】の提唱は、イージー・エレガンス
ハイライトはなんといってもバーバリー。ダニエル・リーがチーフクリエイティブオフィサーとなって4回目のショーは、彼のバーバリーにおけるベストコレクションと言えるでしょう。テーマは難しいコンセプトでもストーリーテリングでもなく、“イージー・エレガンス”。真髄であるウェザーフレンドリーなアウトドアアイテムには、ある時はウォッシュド加工やサンブリーチ加工で着込んだ質感をプラス。さらにシルクポプリンやリネンでごく軽やかに仕立てたトレンチコートや、ニュアンスのある色合いでフォーファーの襟をつけたパーカなど、新しい解釈とスタイリングで展開されました。ユーティリティーやミリタリーの要素も各所にバランスよく散りばめています。またトレンチは解体・再構築されてドレスに、ジャケットに、ケープに、と幅広いバリエーションで登場。
スポーティなアウターのインナーとして目を引いたのは、スパンコールやシフォンのフェミニンなドレスの一連。ビッグボウのトップスやヒップハングのイージーパンツ、カーゴパンツなども新鮮です。それらをさらに軽やかに見せたのは、ベージュ、クレイ、トープなどのニュートラルなトーンとは対照的なペールブルー、ターコイズ、ライラックといったカラーパレット。パターンではバーバリーチェックはもちろん、大小のストライプのほか、イングリッシュガーデンを想起させる小花柄を、あえてドレスやトップではなくパンツやアウターに取り入れました。
会場セットを手掛けたのはイギリスのアーティスト、ゲイリー・ヒューム。ダニエルが1990年に展覧会で見た作品「ベイズ」に基づき、ビニールシートの一種であるターポリンは幾何学形にカットアウトされ、ランウェイのバックドロップとなりました。色は看護師のユニフォームに似た一風変わったグリーン。演出からルックまで、エキセントリックに転ばない、いい塩梅の遊び心とオプティミズムが感じられたショーでした。
新しい境地を開いた【シモーン・ロシャ】
この記事と併せてぜひ読んでいただきたいのは、発売したばかりのSPUR本誌11月号に掲載した、シモーン・ロシャのインタビュー。この10月にRizzoli社から出版予定の作品集に取り組んでいた彼女は、過去の自身のクリエーションから厳格でミニマルなスタイルとユーティリティを改めて模索してみたいと語っていました。また、強くて繊細、そして複雑な女性らしさを遊び心とともに表現したい、とも。
そしてファーストルックを見た瞬間、彼女の言葉の意味が呑み込めたのです。エキセントリックなロマンティックを得意とする彼女の最新コレクションでは、サテンで仕立てたエレガントなユーティリティジャケットも採用されました。ショーノートに綴られていた「叫んで、泣いて、笑って、死にそうになって、そしていちゃつく」という詩のようなフレーズに加え、今回のインスピレーションは、カーネーションの花。この花は香りが良く、レースのような繊細な花びらが折り重なってできる形が美しいのはもちろんですが、古くは男性がフォーマルウェアでボタンホールに一輪のカーネーションを挿す習慣があったことから、マスキュリンなルックへのフェミニンなタッチとしての意味もあったのでしょう。
今シーズンのロンドンのトレンドのひとつにマイクロミニが挙げられますが、ピンクのチュチュは、まるで大輪のカーネーション。またフォルムとしてだけでなく、刺しゅうやモチーフとして、さまざまな方法で展開されました。またこのランウェイで発表されたのは、新しいクロックスとのコラボレーション。デコラティブでボリュームのある靴も、今シーズンのトレンドのひとつです。歴史的建造物である中央刑事裁判所という会場のロケーションも、彼女独特の不思議な世界観の演出に一役買っていました。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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