
老舗メゾンが新アーティスティック・ディレクターのサラ・バートンによりよみがえった。2025-’26年秋冬シーズンの、最大の目玉であったデビューコレクション。ここ数年の流れを刷新する、クリーンでエレガントなスタイルを打ち出し、話題をさらった。
装飾ではなく、フォルムで潔く勝負する作品が際立つ。くっきりと迷いのない線で描いたかのように、服の輪郭そのものに力が宿っていた。序盤から登場したアワーグラスシルエットのジャケットは、正面、横、後ろとどの角度から見ても完璧な形に。緻密なパターンメイキングとカッティング、テーラリングの実力が遺憾なく発揮されている。メゾンの核となるシャープな造形や優雅さが息を吹き返した。
ショー全体から伝わってくるのは、サラ・バートンの描くジバンシィ・ウーマンの快活なエネルギー。単なる理想の具現化ではなく、今を生きる女性のリアリティを感じる。たとえば、1952年にユベール・ド・ジバンシィが手がけた服と同じシャンティレースを使用したドレス。バックスタイルはクチュールを彷彿させるケープ状だが、フレッシュなミニ丈で足もとはフラットなバレエシューズ。軽快な魅力を放っている。
ジャケットのシームは外側に、ヘムは切りっぱなしに。「ワークインプログレス」のディテールは、今はまだ序章にすぎず、サラがさらなる未来を見つめていることを物語っている。ちなみにショー会場のシートは、ブランドに所縁ある邸宅の改装中に見つかった包みを再現したもの。発見時にこの中から出てきたのは、1952年にユベールが発表したデビューコレクションのパターン。彼女が原点回帰するインスピレーション源となった。まっさらな状態で一からコレクションを作り上げる。サラ・バートンの純粋な喜びが、メゾンを前進させる原動力となるに違いない。

イギリス生まれ。セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインを卒業。アレキサンダー・マックイーンを経て、2024年9月、ジバンシィのアーティスティック・ディレクターに就任した。
サラ・バートンが受け継ぎ刷新するメゾンのアイデンティティ

新たにジバンシィのアーティスティック・ディレクターに就任した、サラ・バートンによる2025-’26年秋冬ランウェイコレクション。「私は、現代の女性のすべてを表現したい。強さ、繊細さ、感情的知性、パワフルであること、そしてセクシーであること— そのすべてを」という彼女の言葉通り、女性の体を美しく見せるよう、カットやプロポーションに徹底的にこだわり尽くしたコレクションとなっている。メゾンが永きに渡って誇るクラフツマンシップが、サラによって新たな息吹を与えられ、モダンな女性が愛するワードローブへ更新されている。ランウェイ動画でその画期的な瞬間を目に焼き付けよう。
photography: Ruby Pluhar
ジバンシィ ジャパン
https://www.givenchy.com/
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