週末はマンガ三昧

『源氏物語』も『たけくらべ』も、マンガから教わりました。

大和和紀さんの『あさきゆめきし』がなければ、全54帖にも及ぶ『源氏物語』のストーリーを把握することはできなかったでしょうし、美内すずえさんの『ガラスの仮面』がなければ、勝気だけれども年相応のあどけなさが残る美登利の性格をいきいきと思い浮かべることはできませんでした。普段使っている口語であっても読解力が必要なのに、文語となるとまるで海外の言葉を翻訳するような状態……そうなるとなんとなく意味は分かっても、登場人物のパーソナリティや気持ちを想像しながら読むなんてことはできません。これに気づいた時、やはりマンガって偉大だ、と心の底から思いました。そんな偉大さに気づかされた2冊を紹介します。

右は、今日マチ子さんの『百人一首ノート』(KADOKAWA)。こちらはタイトル通り、百人一首を一首あたり1ページのショートコミックに仕立てたもの。歌に読まれている情景や気持ちを現代に置き換えたストーリーで表現されているので、「この歌はこういうことを言いたかったんだ」ということが血肉を持って感じられます。時にはたった3コマしかないのに、31文字のメッセージがぐっと響いてくる。すると、昔の人と現代の人の考え方に意外と差がないことに気づかされます。恋人に会えなければ淋しいし、返事を待つのはつらい。普遍的な気持ちが詠まれているから何百年と残っているんだ、と知りました。

左は、長崎訓子さんの『MARBLE RAMBLE 名作文学漫画集』(パイ インターナショナル)。夏目漱石の『夢十夜』や向田邦子の『鮒』など、まるで狐につままれたような不思議な味わいの作品ばかりを集めてマンガ化したものです。もとが不思議な話だけに、以前に原作を読んだ時には「なんだか分からないな」という感想しか持っていなかったですが、同じ話をこのマンガで読むと、分からないなりにも「へえ~」や「ふ~ん」と思う部分が増え、「分からなさ」が逆に心地よいものになっていきます。決していろいろと説明されているのではないのにすっとなじんでいく、長崎さんの研ぎ澄まされた表現にしびれます。

週末の楽しみに、ぜひマンガで名作を読んでみませんか?

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エディターMORITA

物心がついた時からパンツ派。今、一番興味があるのは、どうやったら居心地のよい部屋で暮らせるのか。美容、アート担当です。

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