身のまわりの中年に押し付けがましく勧めまくっています、「ヤング・アダルト・ニューヨーク」。すごく端的に内容を説明すると、ブルックリンを舞台に20代と40代のカップルが交流する中でのジェネレーションギャップをコミカルに描いています。この映画、私にとってすべてがツボでした。おまけに終始大爆笑。すべての描写が「あるある」の連続。私には娘がひとりいますが、子持ちの友人に「幼児の音楽教室」に付き合わされて笑顔が固まるナオミ・ワッツ演じるコーネリアには共感するし、「子供が生まれても別に価値観が変わるわけでもないし、自分の人生の充実が結局は大事なんだ」と語るフレッチャーのセリフにも首が痛くなるほどうなずきました。(ちなみにフレッチャーを、ビースティ・ボーイズのアダム・ホロヴィッツが演じているのがまたツボ。やんちゃしてきた人間が枯れたときの、妙味と言ったら!)
この映画の話をまわりの知人とするたびに、また発見がありました。知り合いに、とても美人でイケメンの年下の夫がいて、いろいろな人に慕われていて、子供はいないけれど休日は趣味の映画を見まくってワインの勉強もしている、という方がいます。そんな彼女が「私も時代に取り残されている気がする」というんです。思わず理由を聞くと、「自分には子供がいないから」と。子供がいたっていなくたって、おんなじことを感じるんだと思うと感慨深いものがありました。ちなみに彼女は、(劇中で巨匠映画監督という設定の)レスリーくらいの歳になると中年も若者もなく、みんなおんなじに見えるから、かえって楽なんじゃないかという意見も披露。なるほど。
また、私の中で30代は同じ「中年」の枠でくくられていたのですが、30代前半のエディターと話したところ、彼女はこの映画に描かれている「ヤング」と「アダルト」の両方の気持ちがわかるそうです。ここにも小さいけれどジェネレーションギャップが!
そんなこんなで、中年としての自分の有り様に嫌というほど向き合わされる映画ですが、苦しいどころかむしろ気分が上がります。劇中の音楽(LCDサウンドシステムのジェームス・マーフィ)がツボ、というのもありますし、いけすかない若者を演じるアダム・ドライバーが恐ろしくセクシーなせいもあるかもしれません。
一番大きいのは、自分の姿を笑い飛ばせるということ。そして最後にベン・スティラー演じるジョシュが言う、「初めてやめられたよ。“大人になりきれない子供”を。もう毎日が充実なんてムリだ。悲しいけど、でも僕には君がいる」というセリフが自分にとってとても示唆に満ちていた気がしました。いい歳なのに映画に人生を指南してもらうなんて、こまった大人かもしれませんが、それだけこの「ヤング・アダルト・ニューヨーク」が素敵だと思ってもらえれば。
とにかく子供がいる人もいない人も、すべての中年に観てもらいたい映画です。
ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。