チーターと蛇をおしゃれにまとう、'20年代のミューズ

昔から自分とかけ離れた人に憧れる傾向にあります。女性ならアーティスト気質でちょっとエキセントリックな人(絶対友達にはなりたくないですけど)。

そんな私がなんだかとても惹かれる人が、主に1920年代に活躍したイタリアのソーシャライト、マルケーザ・カサーティ侯爵夫人です。彼女のことを知ったのは、スキャパレリの伝記やアマンダ・リアの自伝「サルバドーレ・ダリが愛した二人の女」がきっかけ。チーターを連れ歩き、度肝を抜く衣装でパーティに現れるカサーティ夫人の描写があり、どちらの本にもほんの一瞬しか出てこないのですが、気になってしかたがありませんでした。なんの書籍だったかは失念したのですが、電飾つきのドレスを着る予定が、電気がショートして舞踏会に出られなかったという逸話もありました。

そんなとき、「THE MARCHESA CASATI Portraits of a Muse」(写真上)という本の存在を知り、早速購入。写真はもちろん、彼女を描いた絵画もふんだんに載っていて、期待を裏切らないファッショニスタぶりが伺えます。

教養もあり知的好奇心も旺盛、財力もあった彼女。当時の芸術家や小説家のパトロンとなり、自分をモチーフにした作品を描かせたり、テーマを設けて豪勢なパーティを催したり。とにかくコスプレの鬼で、写真のようにレオン・バクストがデザインした“夜の女王”の扮装やインド調のドレスをまとったり、他にもペットの蛇をアクセサリーのように巻きつけている写真やオーストリアのエリザベート妃に扮した写真などが満載です。彼女の独特の美学に貫かれる、デカダンな世界に引き込まれます。夫や子供がいながら小説家のダヌンツィオという愛人がいたり、芸術活動やパーティ三昧と、やりたい放題だった彼女。

私たち庶民の想像レベルをはるかに超越するこういったエピソードも興味深いですが、意外と面白いのは、落ちぶれてからです。湯水のようにお金を使い込み、ついに彼女は破産してしまいます。極貧状態でありながら、近くの劇場に、踊り子の衣装から落ちた羽を拾い集めにいってそれで髪や服を飾ったり、炭を使ってトレードマークのアイメークをキープしたりと、おしゃれ魂は健在。写真は50年代に作られた彼女によるコラージュ。やりたいことを気合と工夫で貫く姿に感動します。

彼女は今にいたるまでファッション界にも大きな影響を与え、ジョン・ガリアーノが1998SSのオートクチュール・コレクションでオマージュを捧げたりもしています。

そんなカサーティ夫人と愛人のダヌンツィオをインスピレーションとしたのが、今季のドリス ヴァン ノッテンです。二人が混じり合うかのような官能的かつダンディな服の数々が魅力的でした。発売中のSPUR12月号では、そんなドリスの新作と、過去のアーカイブスをミックスしたスタイリングを披露しています。(カバーもドリス ヴァン ノッテンの今昔ミックスです)。さらに、そのスタイリングを見たドリス本人のコメントも載っています。カサーティ夫人も絶賛してくれたかもしれない、自由で新しい着こなしをぜひ、ご覧ください。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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