2016.12.27

台南、刺激的な西市場

最近の旅先はもっぱら台湾です。レトロでエキゾチック、ほっこり可愛い。リーズナブルな値段で美味しいものがたらふく食べられる。そしてちびっ子連れにやさしいというのが私にとって一番の理由でしょうか。(メトロに乗っていると、びっくりするくらい席を譲ってくれようとします。)そんな人気スポットを、SPUR2月号では萬波ユカさんがナビゲート。題して、「乙女ちっく台湾」。”フォトジェニック””おいしい”という2本柱ではずせない見所を網羅しています。

さて、そんな2月号を片手に台北を攻めつつ、もう一都市という方には台南がおすすめです。かくいう私も前回の台湾旅行では墾丁、今秋は初めて台南に進出しました。行ってみてよかった。台南は”台湾の京都”と呼ばれるだけあって、より趣があり、古きを大切にしていて時がゆっくりと流れている街です。中でも私がいちばんエキサイティングだと思った「西市場」を今回はご紹介します。

外観はショッピングアーケードにかなりなじんでいます。(看板には「西門市場」とありますが、ガイドブックなどには「西市場」と記されていることが多い)。そして「ホントに入って大丈夫?」というほど中は薄暗い。1905年に開設され、かなりの賑わいを見せた市場だったそうです。立ち並ぶ生地店の中を通り抜けていくと、かつてはここで大勢の人が商いをしていたのであろう、というだだっ広い空間が現れました。何も置かれていない空虚な売り台や、積み置かれた朽ちた籠を見ると、時が止まったような感覚に囚われます。

そのまんま國華街の方へ歩き進むと、急に活気を帯びた一帯が現れます。老舗の店はもちろん、子供のころ西市場で遊んでいた若者が「あのころの活気を取り戻したい」と開いた新規店まで。新旧の店がモザイクのように入り混じっているところが面白い。

まず目に入ったのがこちら、「Chun純薏仁」。ハトムギや小豆のスイーツを出すお店です。元は羊肉のスープのお店だったのですが、竈を生かしてリノベーションした店内が可愛い。「オープンは30分後ダヨ」と身振り手振りで伝えられたので後で行くことにしました。おなかもすいてきたので、老舗の「鄭記土魠魚焿」で土魠魚(サワラ)スープ麺を一杯かきこむことに。

オープンキッチンどころではない、調理場と食べるところが地続きの小吃店です。お世辞にもこぎれいとは言えない、ガチのローカル食堂。素っ気無いテーブルと椅子に腰かけて眺めていると、お店の方がサワラに白い粉をじゃんじゃんまぶしてどんどこ揚げ、とろりと煮込まれた大なべのスープをこぼれることも厭わずどしゃっとよそっていきます。ちょっぴり酸味のある”あん”スープが揚げたサワラに絡んでウマイ。今でもたまに「あの店にワープ出来ないかなあ。あの麺をツルッと食べたいなあ」と思ってしまいますね。

そうこうしているうちに、「Chun純薏仁」には列が出来てしまいました。ですので、先に向かいにあるパイナップルスイーツの専門店「凰商號」へ。のどが渇いたので看板メニューの「鳳梨冰茶」をいただきます。氷砂糖と煮込んだパイナップルの果肉が入ったやさしい甘みのジュースで、しゅわしゅわとした食感にライムの爽快な喉ごしが暑い台南の昼下がりにぴったり。

他のお客さんが食べているトーストにも目移りして、追加注文。パイナップルのジャムが練りこまれたトーストで、自家製のビネガーをつけていただきます。トーストをあっという間に完食して胃袋がまだまだ行けることを確信しましたが、目の前の「Chun純薏仁」はますます混雑。一向に入れそうにありません。ああすごく残念無念。旅程もあるのでずっと待ってるわけにいかず、後ろ髪をかなり引かれながら去りました。

ほかにも牛肉スープやかき氷、安心安全な台湾の食材を扱った店など、興味深いスモール・グッド・ショップがいっぱい。自分ひとりだったら一日中、いえ、ずっと居たかもしれません。どの店でもテーブルにどっかと腰を据えていられるほど、妙に居心地がいい。というかここがホームだったらいいのに。台南についてはまた、気が向いたら書こうと思います。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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