くせになるぴりぴり

春先は、山椒の若芽を摘みに山里に出掛けます。芽吹いたばかりの葉は緑の色が浅く、ピカピカしていて柔らかい。時間が経つと葉の色は濃くなり、質感もマットに変わるので、このピカピカ期を逃さないことが大切。さっと湯がいて醤油をひとたらしするだけで、極上のご飯のお供になります。 

山椒の独特の風味が好きなんだとぶつぶつ呟いていたら、知人がこの餅を送ってくれました。仙太郎の「山椒ノ餅」、ぴりぴりの後味が余韻を運ぶ個性派の甘味です。

餅自体はこんな風貌。地味な見た目が、この和菓子の真価を物語ります。

柔らかさはちょうど耳たぶくらい。和三盆の上品な甘みがまず舌の上で広がって、餅のかたちがなくなった頃に山椒のぴりぴりが口内にふわっと残ります。自分の甘味アーカイブスは、瞬発力が冴える「縦ノリ」と、持久力に富んだ「横ノリ」に分類しているのですが、こちらはまごうことなく後者。お茶を口にするとせっかくのぴりぴりが走り去ってしまうので、あえて一切のお茶は省いて、単品で味わっています。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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