読んだら元気がもらえる本

   今発売中の本誌12月号ブックコラムで紹介されているのを見て、気になって買ってみました。「〆切本」。雑誌の編集という仕事においても、人生を左右すると言っていい「〆切」という言葉に、もはや条件反射的に手にとってしまったのかもしれません。
  夏目漱石から谷崎潤一郎、太宰治や手塚治虫、そして吉本ばななに岡崎京子……。日本が誇る文豪から好きな作家のあの人やこの人も。原稿を引き受けたのに、編集者から原稿取りたての電話がくるまですっかり忘れていた、とか、原稿が書けなくて結果極貧だ、と嘆いたり、そもそも仕事が嫌いなタイプなんだ、と開き直ったり。書いてあることは辛い、とか原稿が書けない愚痴や言い訳、「やらなければならないけど気乗りしない」物事を前にしたときの人間の滑稽さなのですが、これって大人も子供も、老若男女、天才一般人問わず同じなんだな、と改めて気づかされました。またその嘆きが創作の裏話を読んでいるようでちょっと楽しくもあります(人の不幸はなんとやら、ということかもしれませんが)。そして基本的には作家本人によるエッセイで締め切りの苦しさや理不尽さが綴られているので、語り口も軽妙でとても面白い。表紙を開くといきなり言い訳や愚痴名言が載っていて、それもくすっと笑えます。

 今日、11月4日はまさにSPUR1月号の最終校了日、という切羽詰まった締め切り日でもあります。そしてこのブログの締め切りも重なっていたり……。「こんなすごい人達でも締め切りを前にすると苦しい。だから一般人の自分がぐずぐずウジウジしてしまうのは仕方ない」という変な勇気と元気をもらいながら、時間に追われつつ校了しています。この本を読んだおかげで焦る自分も客観視でき、いつもより気持ちが楽に校了できました! ……となればいいのですが、自分はまだまだそこまで達観できないみたいです。

エディターASADAプロフィール画像
エディターASADA

主に美容担当。山登りなど自然に触れることが好き。最近は健康とかインナービューティとかいう言葉にめっぽう弱くなりました。

記事一覧を見る

FEATURE