「MILES AHEAD」はフツーの伝記映画じゃない

「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間」が予想とは全然違って、ちょっと面白い映画だったのでご紹介します。

基本的に映画はできるだけ前情報なしで観にいくようにしているのですが、これも「ドン・チードルがマイルス・デイヴィスの伝記映画を作ったらしい」くらいな認識でした。チェット・ベイカーを描いた映画「ブルーに生まれついて」に登場するマイルスの強面っぷりに、逆説的にマイルス本人に関心が高まり、ちょっと観てみようかなと。音楽を担当するのがロバート・グラスパーというのにもそそられました。

しかしそもそもドン・チードルがマイルスって……マイルスはギョロ目で筋骨隆々、精悍な男というイメージ。”大泉洋”似という説もあるドン・チードル、マイルス演るには線が細すぎないかい? という疑念を頭の片隅に抱きつつ映画館へ向かいました。

[注! 以下、いきなりネタばれかもしれません]

その内容には「し、知らんかった! マイルス、ホントにこんなことあったんかい?」とぶっ飛びました。マイルスのエピソードを散りばめてはいるものの、ほとんどがフィクションだと知ったのは鑑賞した後。真面目な伝記映画を期待している人は観にいかない方がいいでしょう。むしろ、マイルスを全然知らない人こそ楽しめるかもしれません。乱暴かもしれませんが、最高にクールなBGMが流れる70年代のブラック・ムービー風活劇、と言っても過言ではない。女とドラッグとバイオレンスと、そしてカッコイイ音楽。

過去と現在が交錯する仕掛けはそこまで珍しくないとして、大胆なフィクションに仕立てるドン・チードルの思い切りのよさには賛否両論あると思いますが、私は拍手喝采をおくりたい。特にクライマックスのボクシング場のシーン! 「ブラック・サテン」の摩訶不思議なグルーブが彩る、時空が混ざり合ったカオスな展開には痺れました。

そうはいっても音楽ファンを唸らせるシーンもちゃんとあります。まず、ハービー・ハンコックにウェイン・ショーターというおなじみのすごいメンバーの登場に、ウーン。そこに加わる新世代のアーティストたちが、ロバート・グラスパーにモデルのようなルックスの凄腕ベーシスト、エスペランサ・スポルディングに、「バードマン あるいは…」で私たちを興奮させたドラマー、アントニオ・サンチェスと来る。今盛り上がっているジャズシーンをちゃんと切り取っています。

音楽が好きな人もそうでない人も楽しめる「MILES AHEAD」、ぜひ観てみてください。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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