危険な女性の香り

7回。「それ、どこの香水?」と尋ねられた回数です。かく言う私も、知人がつけていてあまりにも良い香りだったため、「どこのですか?」と聞いて購入しました。その女性も、「10人以上にはどこの?と聞かれています」とのこと。思わず尋ねずにはいられない、まさにレスポンスのあるフレグランス。その正体は、フレデリック・マルというパリ発ブランドの「PORTRAIT OF A LADY(ある貴婦人の肖像)」という香りです。同名の小説もあるこの名前に、まず妄想をかき立てられます。気高く魅惑的で、ちょっとだけ危うい女性。自分とはほど遠いそんな女性像に、この香水をまとうことで少しだけ近づける気がするのです。

この香りは、なんと言ってもつけて何時間か経った後の“残り香”が最高。つけたては、レッドベリーやターキッシュローズが女性らしく匂い立ちますが、徐々にフランキンセンスやパチュリ、サンダルウッドといった澄んだノートへと移ろいでいきます。それは、とても落ち着くのに一筋縄ではいかない、矛盾をはらんだ空気感。最初にその香りをつけている女性と出会ったとき、あまりにも素敵だったので「もう少しこの人と時間を過ごしたい」と思ったほどです。

香りを言葉で表現するとどうしても抽象的になってしまうので、「PORTRAIT OF A LADY」をつけていそうな女性が登場する写真集を紹介します。『Snapshots of DANGEROUS WOMEN』というフォトブックです。

こちらはピーター J. コーエンというNYベースのコレクターが、蚤の市やフリーマーケットでこつこつと蒐集した20世紀初頭~中盤の女性達のスナップを編纂したもの。写真のなかの女性は、お酒を飲んでいたり、パイプを加えていたり、木登りしていたり、弓を引いていたり……タイトル通り「デンジャラス」。

茶目っ気たっぷりで色っぽく、貴婦人と呼ぶにはおてんばすぎるけれど、まさに一筋縄ではいかない魅力に溢れた女たちが写されています。写真集のページをめくりながら、理想の女性像に思いを馳せる。そこに近づくために、香りを選択する。大人の女性として、服やお化粧と同じくらい、そういうたしなみも大切にしたい、と思う今日この頃です。

★フレデリック・マルの「PORTRAIT OF A LADY」はトゥモローランド渋谷本店で取り扱っています。(50ml)¥27,000

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。

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