独断的インディーズ音楽のすすめ

 昔から映画にしても音楽にしても、メインストリームを毛嫌いする変なクセがありました。周囲が良いと評価するものには賛同したくないという典型的な天邪鬼で、周りが興味のないことに夢中になるのが“イケてる”と信じて止まない思春期を過ごしました。今から思えば、ただの中二病ですが。

 それが大人になるにつれ、次第にJポップや歌謡曲を素直に受け容れられるようになりました。中島みゆきさんの力強い唄に胸を打たれたり、映画『君の名は。』の主題歌に心を震わせたり。やっぱり素晴らしい作品は、より多くの人々に認められて然るべきと認識しました。

 一方で、知名度こそないけれど、全身に稲妻が走るくらいの衝撃を受ける音楽が世界中にひしめいていることも、これまた事実。中二病の後遺症が残ったおかげで(?)、インディーズシーンで活躍するアーティストを、サウンドクラウドやアップルミュージックを駆使してコツコツと掘りあてることが、私の趣味であり日課です。

 つい最近出合った、というか再会したのが、Regaというバンド。ツインギターにドラム、ベースという4人編成で、フジロックをはじめ数々の名立たるフェスへの出演経験を持つ、知る人ぞ知るポストロックの実力派です。彼らのことは以前から追いかけてはいたものの、正直なところ最近は「過去の人」という印象でした。というのも、5年前にアルバムを出したっきり、ライブ活動以外は特に音沙汰がなかったものですから。

 それが結成10周年を迎える今年、ようやくニューアルバムがお目見えしたわけです。しかも、「Rega」というセルフタイトルで。しかも、収録曲のほとんどが初期の楽曲の再レコーディングで。

  メンバーの脱退やレーベルからの離脱など紆余曲折を経て、昔とは圧倒的に違う”今の”彼らのサウンドで、初期の音源をもう一度やり直す。それって、過去の自分たちをぶち壊して再構築する作業のようにも思えます。当の本人たちはもっとユルい気持ちで臨んだのかもしれませんが、少なくとも私には、それほどの自信と根性がみなぎる作品に感じられました。

 もちろん中身も期待を裏切らない、あるいはそれ以上のパフォーマンスです。このバンドは、実はCDで聴くよりも断然ライブで観る方が面白いし圧倒されるのですが、そのライブの臨場感が見事に音源でも再現されています。

 収録曲でもある「Orange」のMVが公開されていたので、ご紹介させてください。ひと言も言葉を発していないのに、なぜか胸に響いてくる。生身の人間くささと体温のような心地良さが漂っていて、無性にこみ上げてくるものがあります。

 10年前に埋めた「Rega」というタイムカプセルを、新しいメンバーと共に掘り起こして新しい声で読み返してみたら、こんなストーリーになっちゃいました、と言われているような気分になるフルアルバム。懐かしい風と新風が同時に吹き荒れる、実に凄まじい作品だと思います。気になった方はぜひコチラからポチッとしてみてください。

 ちなみに、アマゾンの「よく一緒に購入されている商品」欄には、Suchmosのアルバムが出てきました。というわけで、現在発売中の3月号のSuchmosスペシャルインタビューも、どうぞお見逃しなく。

“エディターHAYASHI”

エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。