毎年、ゴールデンウィークに大掃除をしています。水の冷たい年の瀬より、5月の薫風を感じながら網戸を拭きたい。というと聞こえがいいけれど、正直に言えば、年末は仕事がぎりぎりまで納まらず、自宅の大掃除に辿り着けないまま大晦日に帰省するからで、結果、比較的余裕のある5月の連休に大掃除をするサイクルが確立されました。
さて、私の大掃除のメインイベントは本棚の本の並び替えです。この1年に新しく追加された本を整頓する傍ら、昔買った本を読み返してしまうのがお決まりのパターン。そんな、掃除の手をとめて、思わず読み込んでしまった“再発見本”をひとつご紹介します。
『手から、手へ』。2012年に出版された、池井昌樹の詩に、植田正治の写真をつけた絵本です。
どんなにやさしいちちははも
おまえたちとは一緒に行けない
どこかへ
やがてはかえるのだから
これは帯に引用されている本文の一節。「ちちはは」から「おまえたち」へ語りかけるように伝えられる普遍的な家族の物語は、ページをめくるたびに胸がぐっと締めつけられ、本を閉じたあともしばらく鼻の奥がツーンとします。詩の池井昌樹は1953年生まれ、写真の植田正治は1913年生まれと、時代の異なる二人の作品が本の上で並ぶことで、時代を超えてつながっていくひとつの物語が立ちあがる。詩の言葉と写真とを、ページを繰る速度でゆっくりと味わうことができる絵本だからこそ、より心に深く染み込むものがあります。
今日は、母の日。鉛筆書きの“かたたたきけん”にリボンを掛けて、素直に”お母さん、ありがとう”と伝えていた子供の頃と比べると、自分も親も歳をとり、家族の形態や関係が変化して、あれやこれや昔ほどはシンプルにいかないもの。そういう大人のために、シンプルに研ぎ澄まされた言葉と写真とで綴られた、この本があるのかもしれません。
日々、モード修行中。メンズとレディースを行ったり来たりしています。書籍担当。どうぞよろしくお願いします。