子どもの頃、お正月に親戚一同が集まると、決まって百人一首をしていました。その時ばかりは、いつも寡黙な祖父もにぎやかで、子ども心にも嬉しかったのを覚えています。それから数十年。大人になって、親戚一同が集まることはなくなり、百人一首をすることもなくなりました。でも、お正月なら百人一首を楽しみたい、そんな大人の皆様におすすめしたいのが、この2冊。
今日マチ子さんの『百人一首ノート』(KADOKAWA/メディアファクトリー)は、それぞれの歌を今日さんのマンガで描いたもの。切ない別れの歌も恋の歌も、現代に置き換えたマンガで描くことで、その気持ちが痛いほど伝わります。読み進めると「そうか、そういう意味だったんだ」と子どもの頃は分からなかった歌の意味も、実感を伴って分かるんです。もともとは雑誌連載だったのですが、このページが読みたくて、その雑誌を買っていたことを今でも覚えています。
そして清川あさみさんと最果タヒさんによる『千年後の百人一首』(リトルモア)。絵札を清川さんが、現代語訳であり現代詩を最果さんが担当。全く新しい百人一首が誕生しました。ビーズや刺しゅうで飾られた美しい絵札は、子どもの頃に感じた「なんでお姫さまの札は少なくて、お坊さんやおじさんの札ばかりなんだろう」という不満を忘れさせる可愛さ。そして最果さんの詩は、今は古めかしく感じられる和歌も、詠んでいる当時は若い人の歌だったんだ、と改めて気づかされるフレッシュさにあふれています。本のレイアウトが、もともとの歌よりも、清川さんの絵札と最果さんの詩に先に目がいくように作られているので、どの歌のことを描いているのだろうと、想像しながら読む楽しみも。
大人のための”読む”百人一首を、お休みのお供にぜひどうぞ!
物心がついた時からパンツ派。今、一番興味があるのは、どうやったら居心地のよい部屋で暮らせるのか。美容、アート担当です。