「ロー(フランス語で水の意)」と聞いて、どんな香りを思い浮かべますか? 雨上がりのちょっと湿った空気の匂い、それとも海辺の爽やかな風の匂い、それとも……。
1968年に誕生したディプティックの初めての香水「ロー」は、実はシナモンやクローブが鼻をくすぐるオリエンタルな香り。ディプティックの3人の創業者のうちの一人、画家のデスモンド・ノックス=リットの旅での思い出を香水にしたもので、性別を感じさせないユニセックスな香りは当時としてはとても革新的でした。この革新さこそ、ブランドの真髄。だからこそ、ブランド初の香水にすべての基本となる「水」と名付けたのだと思います。それから50年。このフレグランスデビュー50周年を記念し、ディプティックに新しいふたつの香水が誕生しました。それが「テンポ」(右)と「フルール ドゥ ポー」(左)です。
3月1日の日本での発売に先駆けて、先日パリで行われた発表会に出席したので、その模様を少しだけご紹介したいと思います。
今回の香水は、1968年に流行っていたというパチュリとムスクのふたつを核に作られたのですが、会場にはその当時を感じさせる仕掛けがいっぱい。 まず入り口には、五月革命を思わせるプラカードが並び、当時流行っていたカルチャーやニュースを見せるコーナーが。
これらのゾーンの奥にようやく新作がお目見えします。「テンポ」は3種のパチュリを使った力強さ、「フルール ドゥ ポー」はアイリスの根やアンバーがムスクを引き立てる繊細さが特徴。
最初の香水が旅の思い出から生まれたように、ディプティックの香水は、いずれも記憶と深く結びついているのですが、「テンポ」と「フルール ドゥ ポー」もそれは同じ。1968年という激動の時代を香水に昇華したふたつの香りは、身にまとうだけで前に進む力をくれる、そんなパワーが秘められているように感じた発表会でした。
現在発売中の4月号では、このふたつの香水を作った調香師のオリヴィエ・ペシューと、エチケットを描いたふたりのアーティストのコメントを掲載しているので、そちらもぜひチェックをしてみてください。
物心がついた時からパンツ派。今、一番興味があるのは、どうやったら居心地のよい部屋で暮らせるのか。美容、アート担当です。