子どもの頃に読んで、今も忘れられない本はありますか? リュックを背負って冒険に行くんだ!と決意した『エルマーのぼうけん』、初めてフンコロガシという虫の存在を教えてくれた『ファーブル昆虫記』、そしてマーマレードジャム好きのきっかけとなった『くまのパディントン』……。
今年は、年初の映画『パディントン2』公開に続き、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで『生誕60周年記念 くまのパディントン™展』が開催中など、パディントン・イヤー。現在発売中のSPUR7月号でも、本展覧会の監修者である松岡享子さんにインタビューをしています。
松岡享子さんというと、「パディントン」シリーズや「ゆかいなヘンリーくん」シリーズなどの翻訳家として知られていますが、実は日本に児童図書館という考え方を根付かせた人でもあります。日本とアメリカで図書館学を学んだのち、1974年に石井桃子さんたちとともに財団法人東京こども図書館を設立。本誌のインタビューも、東京子ども図書館で行いました。ちなみに松岡さんのポートレートを撮ったのは「おはなしのへや」。いつもは本の読み聞かせを行っている部屋だそうで、薪ストーブと麦の穂のステンドグラスが印象的な素敵な場所です。
松岡さんの言葉で特に印象的だったのは、人間の中には、現実の世界だけでは満たされない何かがあって、心の中に自分だけの世界を描くのには読書が大きな助けになるということ。実際に、『くまのパディントン展』を訪れると、本を読む楽しさを思い出させてくれるしかけがいっぱいです。中でも、のちに松岡さんとともに「パディントン」シリーズの共訳者となる田中琢治さんの手紙が私にとってのハイライトでした。田中さんは幼い頃に書いたこの手紙がきっかけで松岡さんとの交流を深め、一緒に翻訳を手がけることになったのですが、読書には人を動かす力があることを改めて考えさせられます。
ぜひ今度の週末には、SPUR7月号のインタビューを読んでから、『くまのパディントン展』に行ってみてください。本を読みたい気持ちをぎゅっと刺激されるはずです。
物心がついた時からパンツ派。今、一番興味があるのは、どうやったら居心地のよい部屋で暮らせるのか。美容、アート担当です。