謙虚なのに地味なのに、絶賛されまくるバッグ

あれは3年〜4年ほど前の春の話です。夫の誕生日プレゼントを探していて、ふらっとEditionを訪れたんですね。いくつかディスプレイされた中からストライプのTシャツを手に取ると、スタッフの方が説明してくれました。シュプリームの元ヘッドデザイナーである、ルーク・メイヤーが立ち上げたOAMCというブランドであると。要約すると、超クールで才能が爆発してるデザイナーであると。そのルーク・メイヤーこそがのちにジル・サンダーを夫婦で引き継ぐことになるわけですが、そんなこと、つゆほども知らない時代の話です。
そのTシャツがこちらです。洗い過ぎてくたっとなってしまってるのですが、ご愛嬌。

この洗練されたネイビーの細めストライプと、胸ポケットでは横位置に切り替えられた遊び心に惹かれて購入。早速夫に渡すと、気に入った様子で、飲みに行くたびに着ていたようです。ある日興奮気味にこう言ってきました。
「このTシャツを着てると絶対誰かに褒められるんだけど!」さらに別の日には、「今日は飲み屋で、服好きっぽい知らない男の子にいきなり『あの、すみません。そのTシャツ、どこのですか?すごくかっこ良くてつい……』って聞かれた!」と言うではありませんか。別の日にはバーの店主に褒められたそうです。一体全体、このTシャツ、何者なんでしょう?一見なんてことない、まぁどこかにありそうな……。それなのに、そんなにも周りから褒められることってありますか?謙虚なのに目立たないのに、めちゃくちゃ評価されるって一番ずるいやつじゃないですか。

3年ほど経って、そのルーク・メイヤーが妻のルーシー・メイヤーとともにジルサンダーのクリエイティブ・ディレクターに就任した時の喜びと言ったら!
そして今や、「これから何をしてくれるんだろう?」という期待を裏切らない素晴らしい服作りで、たくさんのモードラバーを魅了しています。2月にミラノで拝見した18年秋冬コレクションも、みずみずしく澄んだ世界観にうっとりしました。キャンペーンフィルムの監督にヴィム・ヴェンダースを起用するセンスも好きです!

さて、新生ジル・サンダーでわたしが買ったのは箱型のミニバッグです。こちらは17年秋冬のコレクションから。

このストラップの結び目に漂うオリエンタリズムと、ソリッドなボックスの掛け合わせ。こんな、さりげないけれどグッとくるデザインを、どうして次から次へと編み出せるのか。案の定このバッグも持って出かけるたびに「可愛いねー!」と会う人会う人に褒められ、友人が同じタイプを購入していました笑。同じ職場で働く学生さんとも被っちゃいました。おそるべし、メイヤー夫婦。

派手さはないけれど、確実にレスポンス度高い服を生み出すメイヤー夫婦。これからもずっと応援して行きます!

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。