2019.09.01

爆笑してラップに乗ってるうちに感じる、イマドキの「分断」ってなんぞや

『ブラインドスポッティング』🄫2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほかでロードショー 配給:REGENTS

バラク・オバマ元大統領が大絶賛という触れ込みと、「トレインスポッティング」と似た響きのタイトルが気になっていました。映画、『ブラインドスポッティング』。いわゆる「ブラック犯罪ムービー」だと思って観たら想像を超えていて。ちなみに主人公のひとりを演じるラファエル・カザルは若かりしころのユアン・マクレガーを彷彿させるものの「トレインスポッティング」とは関係ありませんでした。「ブラインドスポッティング」は盲点、という意味だそうです。

舞台はオークランド。黒人のコリンは暴力事件を起こして指導監督期間の残り3日を何ごともなく乗り切らなくていけない。そこに絡むのは幼馴染の白人マイルズ。彼のやんちゃ過ぎる行動が、コリンの努力をたびたび台無しにしそうになり、ハラハライライラ。

「黒人と、彼らを虫けらでも扱うかのような白人警官」という典型的な描写もありますが、それだけじゃないのがミソ。地元にヒップなカルチャーが流入してきて、例えばお気に入りのファストフード店にビーガンバーガーが登場したり、コンビニで飲み物を買おうとして、1000円近くするオサレ野菜ジュースに「高っ」となったり。自分も近所でいつも飲んでるコーヒーがじわじわ値上がりしてザワついた経験があるので、思わず爆笑。

「敵」があからさまに裕福な白人ではなく、日常的にちょっと高いジュースを買えるような、リア充の人々というのが今っぽい。“意識高い系”には黒人もアジア人もいて、IT企業につとめ、パーティでは地元のオーガニックな食材によるオサレなケータリングやクラフトビールに舌づつみをうつ。これって世界のどこでもあるある現象なんですな。

黒人のコリンはあえて新しい波に乗ってみようとするけど、白人のマイルズのほうが「いけすかない」カルチャーに憤然とする。ただ黒人であるというだけで日々怖い思いをするコリンだけど、生きるのがしんどそうなのはむしろマイルズな気がしてきて……。単純な二項対立じゃない、パッチワークのような複雑さ。そんななかでの個々のアイデンティティをめぐる奮闘がいじらしい。いつも仲良くつるんでいても見えている景色がこれだけ違うんだよ、という現実を突きつけられてヒリヒリしたり。

舞台はブラックパンサー党が生まれたオークランド、人種差別があってちょっとラフ……日本人には遠い世界のように思えるかもしれませんが、何度も爆笑しているうちにぐいぐい引き込まれ、同じ今を生きる人間として肌で共感すること多々。主演と脚本をともに担当し、実生活でも長年の友人であるラファエル・カザルとダヴィード・ディグスの輝きを目撃してください。

関係ないけど、引っ越しバイトをする彼らの、つなぎファッションも可愛いですよ。

↑右がコリンを演じるダヴィード・ディグス、左がマイルズを演じるラファエル・カザル。私のお気に入りのシーンの一つです! 🄫2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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