「ヤバい」女の子は、他人事とは思えない

『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』(はらだ有彩・著)

週末の夜、ほろ酔い気分で夜遅めの散歩をして、ノリで本を買う、ということをよくやります。こちらはそんな夜に買った一冊(というわけで、「日本のヤバい女の子」をすっ飛ばして、いきなり「日本のヤバい女の子 静かなる抵抗」を買っています)。SPURでも作者のはらだ有彩さんにはお世話になっていますし、「ヤバい女の子」というからには、オバケや妖怪がたくさん登場しそうで面白そうだし、装丁が名久井直子さんで可愛いし……という単純な動機でした。が、読んでみると「昔話をポップに切り取った」以上の痛快さがあり、思わず一気読みしてしまいました!

フシギな化け物が出てくる「怖オモシロイ」話、くらいの認識でなんとなーく知っていた昔話。こういった話が生まれてくる背景にある「男女観」を踏まえつつ、今の私たちが「だよね!」と共感できる新解釈を繰り広げています。私がなるほどと思ったのは、「女性は従順」なのがデフォルテであるからこそ、世の中の「常識」に従わなかったり、反撃してくる女性は「得体が知れなくて怖い」、だから化け物として描くっていう構図。

現代でも、よくあるじゃないですか。たとえば浮気などで男が女をひどい目にあわせ、女は「嫉妬」に苦しめられる。たとえばこちらで紹介されている「雨月物語」は、ひどい目に合わせた元夫を磯良が殺してしまう有名な話ですが……一般的な感想は、

・男は人としてだいぶ非道。まあ何らかの魅力はあったのかも。悪気はなさそう。

・(一部の人は)まあ男ってそういう生き物だから仕方ないよね。

・女は「嫉妬」というドロドロした感情から殺したんだよね。怖い~!

かもしれませんが、そこに待ったをかけているのがはらださん。「嫉妬したからじゃなくて、自分の尊厳を守るための行動なんだってば!」と。磯良の感情を「嫉妬」とすること自体に、男性にとって都合のいい解釈があったり、女性に受け身を強要しているのでは? と。

知っているようで知らなかった昔話を、カジュアルなことばで「超意訳」しつつ、登場人物に同年代の友人かのように話しかけ、「化け物になる」に至るまでの心の機微を探ろうと奮闘する、その熱量も感じながら楽しく読めます。そして読了後は「女ってこうだよね~」と私たちが私たち自身を縛るような潜在意識を、爽快にほどいてくれるんです。そこにピンと来る方にはオススメの一冊ですよ。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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