ねこにこそ、話を聞いてほしい

SPUR本誌で「ハイツユートピア」を連載中の、漫画家・やまもとりえさんの『ねこでよければ』(ホーム社)。ウェブの掲載分に描き下ろしを加えた単行本が、1月23日に発売になりました!  はじめて知ったきっかけは、やまもとさんのTwitter。「ねこねこ横丁」なる猫漫画サイトでの連載を告知されていて「かわいいねこが出てくるのかな~」くらいの軽い気持ちで読み始めました。それが……兎にも角にもみなさま、こちらからまだ読めますのでとりあえずどうぞ!!

……いかがでしょうか? 私は、どの登場人物もあまりに他人と思えなくて、ゆるふわな期待をいい意味で裏切られました。


第一話はまず、バイト先の先輩に片思い中の女の子が登場するシーンからスタートします。思いを伝えるか迷ううちに、その先輩にはすでに彼女がいることが発覚して……。そんな女の子の悩みに乗ってくれるのは、
半年前からその子の家に住み着き始めたねこ。それもある日突然喋りだしたねこ。関西弁で。「(振っ切るために)告白してみたらどうやろ」と。背中を押され、無事にデートに誘えて思いを伝えて吹っ切れてめでたし……とはならないのが、現実。続く2話は、件の先輩の彼女の視点へとシフトしていって……。

物語はそうして「ねこでよければはなしききます」と看板を掲げたねこのもとに訪れる人々を中心に、オムニバス形式で進んでいきます。そのモヤモヤした感情は、誰にでも身近で、どの瞬間にも起こりうること。“何者にもなれなかった”自意識だったり、他人の境遇や才能を妬んでしまったり、親の期待を押し付けたり、押し付けられてしまったり。ねこはそんな人々を否定しない。「だれも悪くないねん、がんばすぎてるだけやねん」と。私、読みながら5、6回泣いたんですが(涙)、それはそういう類の悩みで自分が落ち込んでいたときに欲しかった言葉を、ねこがかけてくれているからだな、と。あの頃のくよくよしていた自分が今になって救われるというか(もちろん、現在進行系的なヒリヒリ共感する悩みも登場する……)。特に私が好きなのは「人生おわるその日まで新しい自分が更新されんねん」というセリフ。きっとこの言葉は、つまづきそうになったときにも背中を押してくれる気がする。あと、自分のこと「おっちゃんはな」っていうねこがシンプルにめちゃくちゃかわいいです。

本当にこんなねこがいたらいいのに、って一億兆回くらい思ったので、とりあえず私は心の中にねこに住んでもらって、疲れたら話を聞いてもらう……ってセルフねこカウンセリングを実施していきたい。本当に力強くオススメの作品なので、ぜひご一読ください!!

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エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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