ハマスホイのグレーに惹かれて

東京都美術館で開催中の「ハマスホイとデンマーク絵画」。デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイと、同国の作家の作品で構成されています。展示に通底するのは、光の美しさと、静けさ、そしてノスタルジー。ハマスホイは長年住んだコペンハーゲンの部屋をたびたび描いているのですが、どれも空間に体積した長い歴史がじんわりと滲み出てくるような筆致なんです。決して派手ではないし、華やかでもない。でも、経年劣化した床に窓から射し込む光があまりにきれいではっとさせられる。空気中を漂うほこりの粒まで見えそうなくらい、時間が止まった静かな空間。古いアパートメントへの親密な視点が、見ている側にもゆっくり浸透してくるというか。じーっと眺めていてもまったく飽きないんですよね。恥ずかしながらハマスホイのことには明るくなかったのですが、この展示で彼の美意識に触れて、ずっと感動しきりでした。

ちなみに、ハマスホイとも関連するデンマーク絵画として、スケーインという「未開の地」だった漁師町を舞台に描いた作品群も揃っています。当時、コペンハーゲンという都市に暮らす人々は、いわゆる「田舎暮らし」に憧れを持っており、海に繰り出す漁師たちをヒロイックに勇ましく描いたものが人気だったそうで。カントリーサイドへ心惹かれる気持ちは国や年代を問わないのだな……とひとり納得したりもしました。

さて、ハマスホイの話に戻りますが、私が特に気に入ったのは、絵画のグレイッシュなくすんだ色み(およそ4年前に行ったジョルジョ・モランディの展示でも似たようなことを言っているので、多分本能的に好きな色なんだと思います)。郷愁的でレトロなムードがたまらない。そしてそのじんわり刺さった「この色素敵だわ~」という気持ちは、物販コーナーで爆発しました。グレーのグッズが、たくさんあるじゃないの!

異なるグレーの3色展開があったキーリング。持ち帰りもビニールバックか紙の封筒かを選べる仕様でした

なんとも、当時ハマスホイが通っていた王立美術アカデミーの教授も「彼のパレットには白とグレーの4色しかなく、それで素晴らしい絵画を生み出しているのだ」的なことを語ったらしく、繊細な色彩感覚が当時から高く評価されていたことも頷けます。この展示のために制作されたオリジナルグッズにはていねいな説明が添えられていて、熱量のすごさにもまた感動。ハマスホイの色にあわせて調合したキャンドルや、絵から抽出したグレーで後染めしたTシャツ、マットな質感にインスピレーションを得た麻100%の缶バッジなど。デザインもシックでセンスがいい! 「お買い物のときにどうぞ!」と添えられたグレーのエコバッグや厚紙のファイルも揃えられており、環境への配慮にも共感します。最終的に、ひとめぼれしたツートーンのキーリング(上写真)と紙ファイル(下写真)を購入! 大事に使います。

紙ファイルは耐久性のため、裏地も補強されています。ガチャガチャには、ほかにも絵の中のモチーフ(ドアやストーブ、テーブル)などがピンバッジ化されており、そこをバッジにするの!?というユニークなセンスを感じます(笑)
紙ファイルは耐久性のため、裏地も補強されています。ガチャガチャではほかにも絵の中のモチーフ(ドアやストーブ、テーブル)などがピンバッジ化されており、そこをバッジにするの!?というユニークなセンスを感じます(笑)

はあ満足、と思っていたら出口にピンバッジのガチャガチャがありついこちらにも手が伸びました(笑)。見事?写真上のハマスホイの自画像を当てて、ほくほくと帰路に着いたのは言うまでもありません。

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エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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