岡尾さん、センスって何ですか?!

自宅でできることを考えるこの週末。私の密かな楽しみはこの発売したばかりの『センスのABC』(平凡社・1800円)でした。スタイリスト岡尾美代子さんの新刊です。

 

オリーブ読者だった10代の頃の憧れから、初めて岡尾さんとお仕事させていただいた時は震えたものでしたが、いまでも岡尾さんの作るページやエッセイは大好きです。現在は面識があるのでご本人を前にあんまり全面に出すと我ながら「気持ち悪いと思われるかも……」と危惧して自粛してますがほんと一言でいうとただのファンなんですね。なので新刊が出る、という噂を聞いたときから今回も楽しみにしていたのでした。帯の「センスって何だろう?」というテキストを目にした瞬間から「な、何ですか!?」と前のめりに心の中でエア岡尾さんに話かけてしまうところからスタートです。
いや、ほんとに「センス」って一言では語れない問題なんですよね。以前、独立したての若いスタイリストさんと物撮影のお仕事をご一緒したときのこと。スタジオでがんばってその商品を並べてくれて撮影をしてみるのだけれども、なんだか決まらない、という瞬間がありました。これは、正確には「決まりすぎていた」というのが原因だったのですけれど。なんだか整然としていて面白みにかける、この商品はもっとかわいい瞬間があるはずなのに、と考えていて思い出したのは岡尾さんのスタイリング。この新刊の写真を見てもわかるのですが、岡尾さんの物撮りは、ものすごく絶妙なんです。クマのぬいぐるみが紙袋をかぶっていたり、齧りかけのトースト、脱ぎっぱなしたような靴下。どのアイテムにも愛すべき瞬間があることを、教えてくれる写真ばかり。岡尾さんのスタイリングをヒントに思い出してスタイリストさんに完璧じゃない状態、をリクエストしたところ写真はしっくりときてみんなが納得する仕上がりになった、ということがあったのでした。もちろんその若手スタイリストさんのセンスなくしては成立しない撮影だったのですが。
そんなことを思い出しながら『センスのABC』を読むにつけ、そのふとした一瞬に目をとめる、かわいい、きれい、と心が反応できることってまさに「センス」なんだな、ということがよくわかります。
寒い春の日、満開の桜を想いながららあたたかいお家の中で。最近の閉塞感に心まで閉じてしまわないように、センスの” イメトレ”はいかがでしょうか?

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エディターTOTOKI

ファッションと占い担当。おしゃれは我慢、ができないので、着心地重視。休みの日は、大体インテリアのことを考えています。