現在発売中のSPUR3月号「あつまれ 好きなように服を着る会」で漫画家の内田春菊さんを取材させていただきました。全盛期のヴィヴィアン・ウエストウッドから、オランダの子供服ブランドまで、数々のファッション遍歴をお持ちの春菊さん。印象的だったのは「服は捨てません」という一言。その証拠に、息子が愛用していたパーカも自分のワードローブにしてしまうほど。娘たちからもらったというアクセサリーもプライスレスな価値を感じます。
そんな時、母から「買い取りに出してほしい」と古着が数点届きました。公務員時代に着ていたシャツやジャケットがメインでしたが、このブルゾンを手にした時、ブワッと過去の情景が思い出されました。雪が積もったとあるお正月。家族で村の神社にお参りに行く道すがらの母の後ろ姿です。真っ白い景色の中で、黒とピンクのコントラストと派手な刺しゅうがよく映え、可愛いなと子供心に印象に残っていました。私が小学生の頃、80年代後半から90年代でしょうか。思い返せば母は毎年冬になるとこのブルゾンを着ていました。今は亡き祖父母も父も元気で、将来になんの不安もなかった(ような気がする)小学生時代の幸せな思い出と重なり、このブルゾンは買い取りに出せませんでした。
当時の母と今の私は同い年くらいです。肩パット入りで、完全なる80年代シルエット。幸い状態も良いので、この冬いかにこのブルゾンを着こなすか、を考える日々です。かなりの難題ですが、「ファミリー・ヴィンテージ」として大切に熟成させていきたいなと思っています。
顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。