いつもSmall Good Thingsを読んでくださり、ありがとうございます。手前味噌ですが、編集部員の日替わり記事を振り返りながら、あれもこれもポチっちゃった!と思い出す品が多数(笑)。そんなモノ愛溢れる連載の年内最後の回は、エルメスのリップケアバームです。
「エルメス A to Z」特集を担当しまして、約3ヶ月間毎日エルメスというメゾンについて調べ、試し、考えを巡らしていました。馬具職人から始まったストーリーは、ファッション、ライフスタイル、ビューティにまで拡張しています。どのジャンルにも共通しているのは「職人の誇りと、職人への敬意、そしてエルメス社の皆様の機知に富む“熱さ”」だと思いました。そのパッションは、ジャンルレス、プライスレスに注がれています。(ドキュメンタリーのプロジェクト「HUMAN ODYSSEY」も素晴らしいので、未見の方はぜひ年始のお休みにチェックしてみてください。)
私が愛用している手帳は、5年目のレフィルに入れ替えたところ。仕事ではウェブカレンダーも使いますが、レザーの質感や上品な紙に心がときめく毎日。プライベートの予定を書き込むときは、ちょっとした贅沢な時間だなと思います。そんな「ちょっとした贅沢」を感じるもうひとつのアイテムがこのリップケアバームなのです。
ピエール・アルディによるモダンなデザインのケースは、エクスリブリスが高貴に輝いております。眺めているだけであっという間に時間が経ってしまうほど、本当に美しいですよね。
ドーム状のバームは、つけた瞬間からとろんと唇に馴染み、しっとりとした潤いを与えてくれます。ほのかな香りもセンスがいい。個人的には塗った後に艶があまり出ないところがさっぱりしていて特に好みです。そして、エルメスのリップは手帳と同じくレフィル交換できる仕組みがうれしい。手軽に買って、ケースごと処分する、という行為を数十年続けてきましたが、そろそろ、もう止めにしたい。そんな気持ちにぴったりフィットしております。
問題は、2020年の発売以降、瞬く間に人気になり、欠品が続いているというところ……。ですが、見方を変えれば、無理して過剰に作らない姿勢でもあると思います。そんな誠実な物作り、そして、作った物への責任をどう取るのか。この小さなプロダクトからも、メゾンの矜持を感じ、大いに学びます。
2022年のSPURも、誠実に、熱量を持ってお届けできるように精進したいと思います。
みなさま、よいお年を!
顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。