ハンカチーフには、きっと物語がある

昨年末、橋本愛さんが歌う「木綿のハンカチーフ」を聞いて、心が震えました。世代的なものもあると思いますが、私がこの曲を知ったのは椎名林檎さんのカバーから。その時は、都会から帰らない彼を思う、彼女の悲哀の方がより胸にじわりと広がっていた記憶があります。そこから太田裕美さんの原曲を辿り「あ、こんなにポップなサウンドだったのか!」と驚いたりも。子供ながらに、ひとつの愛のかたちを考えるきっかけとなった気がします(あとは宇多田ヒカルさんの「光」とCoccoさんの「強く儚い者たち」も、思春期のバイブル・愛・ソングでした……)。きっと人によっても共感するポイントや解釈も違いますよね。そして今回、橋本愛さんが歌う動画を見て、また新たな物語世界の広がりを感じました。迫ってきたのは、彼女の寂しさや切なさももちろんのこと、恋人を想うけれど都会を去るわけにはいかない、狭間で揺れる彼の気持ち。きらきら輝く街頭は眩しく、手放し難い。大人になったからこそ、より響くものもあるかもしれません。後半にかけての橋本さんの繊細な声の震えも、本当に素晴らしくて。ことあるごとに聞いていたんですが、配信と、作曲家・筒美京平さんのトリビュートアルバムにも収録されると知って、歓喜! 楽しみです。

最後の贈り物として彼女が求めた、素朴な木綿のハンカチーフ。そういえば、と思い出したのは先日友人がさらりとプレゼントしてくれた、こちら。PASS THE BATONの「半カチーフ」でした。製造の都合で半端に余ってしまった布を縫い合わせたアイテムです。ステッチの両端の糸がぴろっと長めに残されていたり、ちょっとしたディテールも素敵なんです。何より、全然違う運命を辿っていくはずだった、もしくは使い途がないまま捨てられてしまっていたかもしれない布地たち、と思うとたまらなく愛おしい。私も“涙拭く”日には、そっとこのハンカチーフを取り出して、目頭をグッと抑えるのか。分からないけれど、辛い時にはおともにいて欲しい。今のところはノー・ジェットタオルな日常を併走することになりそうです。

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エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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