もっとも好きな絵本は「だるまちゃんとかみなりちゃん」で、幼い頃それはもう夢中で何度も何度も読みました。近未来都市を想起させる、かみなりちゃんが住む街で、プールに行ったり(プールや浮き輪、街灯などいろいろなモノがさりげなくかみなりちゃん型になっているのもツボでした)、さまざまな遊びをするだるまちゃん。精緻に書き込まれた街の様子や、かみなりちゃんたちの暮らしの様子をいつもじーっと見ては、読むたびに新しい発見があっていつもワクワクしたものです。
幼い頃の記憶に結びついた感覚や感情というのは、フラッシュバックすると強烈に蘇るもので、あれからウン十年たっても、だるまちゃんやかみなりちゃん、てんぐちゃんの姿を見るたびに「キュン」を通り越して「キュイーーーン!」と胸が掴まれてしまいまして、つい夢中になってしまいます。
そんな私なので、もちろん、現在Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されている『かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと』にはもちろんイソイソと出かけました。
さまざまな絵本の原画や、下絵はもちろんなのですが、若い頃に描かれた油彩画などもふんだんに展示されていた充実の内容。特に圧巻だったのはこの展示が初公開という、幅5メートルにも及ぶ巨大な未完作品、『宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜(通称:生命図譜)』です。地球の誕生から、生物の進化を年表のような形式でつぶさに追っていくこの作品、思わず顔をできる限り近づけて、引き込まれるようにじーっとつぶさに鑑賞してしまいました。このような大作に最晩年に取り組んでいた、という情熱に畏敬の念に打たれました。
グッズコーナーでは、狙っていただるまちゃんのぬいぐるみをゲット。使い勝手の良さそうなからすのパンやさん和食器も・・・。そのほか色々なグッズがあって大満足の展示でした。
『未来のだるまちゃんへ』というすばらしい名著があるのですが(会場の壁にもところどころこの本からの抜粋の言葉が紹介されていました)、展示をみて、改めて自宅の本棚から引っ張り出してパラパラと読み返してみたら、その中の一節に手が止まりました。
『生きるということは、本当は、喜びです。
生きていくというのは、本当はとても、うんと面白いこと、楽しいことです。
もう何も信じられないと打ちひしがれていた時に、僕は、それを子どもたちから教わりました。〜中略〜
だから僕は、子どもたちには生きることをうんと喜んでいてほしい。
この世界に対して目を見開いて、それをきちんと理解して面白がってほしい。
そうして、自分たちの生きていく場所がよりよいものになるように、うんと力をつけて、それをまた次の世代の子どもたちに、よりよいかたちで手渡してほしい。
どうか、どうか、同じ間違いを繰り返すことがないように。』
あの頃、子どもだった私は、うんと力をつけて、よりよい場所をつくることができているだろうか? 渡されたバトンの重さに、大人になった私は正直すこし怯み、己の非力さを省みるばかりです。だけど、下を向いてばかりいても何も始まらない。だるまちゃんやかみなりちゃん、てんぐちゃんやからすの一家のように、まずは人生を喜び、世界に対して目を見開いて、面白がることを忘れないでいたい。そう思ったのでした。
主に美容担当。山登りなど自然に触れることが好き。最近は健康とかインナービューティとかいう言葉にめっぽう弱くなりました。