今シーズン注目したいカラーのひとつと言えば、“黒”。 SPUR5月号でも、『春だからこそ、モノトーン』というテーマで、この時期にチャレンジしたい無彩色の着こなしを紹介しています。装いをマチュアに仕上げるブラックは、ミニマル&シックの潮流が高まる今のムードにぴったりです。
そんな“黒”と言えば、80年代初頭にデザイナーの山本耀司さんと川久保玲さんが大々的にコレクションに取り入れ、「黒の衝撃」として業界を震撼させたのは有名な話。禁欲的なイメージが強かった黒を基調に、左右非対称にデザインされたルックの数々は、かつての当たり前を打ち壊すエポックメイキングな出来事でした。
そんな山本さんが現役でデザイナーを務めるヨウジヤマモトの展示会に行くと、いつも服の持つ力に圧倒されます。フロアに並ぶ服は、黒がメイン。といっても、一着一着が全く異なる個性を持っています。光の反射率や布の重なり、濃淡、生地の落ち感、複雑なパターンに及ぶまで、さまざまな要素を繊細に操り、多様に表現しているのです。たとえ一枚の生地をそっと縫いつなげたようなシンプルなドレスでも、実はドレープの出方や素肌の見え方まで細やかに計算されていて、その均衡が神秘的な美しさを生んでいます。一色という制限下にあるからこそ、いつもスルーしてしまうような些細なことにまで意識が向き、衣服や布の持つ美しさに、改めて気づかされます。
周囲の人の着こなしが気になって仕方ない私服ウォッチャー。
街でも目を光らせています。ミニマルで、少しひねりのある服が好きです。


