今季最注目の「黒」と言えば! 【ヨウジヤマモト】のジャケットを手に入れた話

今シーズン注目したいカラーのひとつと言えば、“黒”。 SPUR5月号でも、『春だからこそ、モノトーン』というテーマで、この時期にチャレンジしたい無彩色の着こなしを紹介しています。装いをマチュアに仕上げるブラックは、ミニマル&シックの潮流が高まる今のムードにぴったりです。

そんな“黒”と言えば、80年代初頭にデザイナーの山本耀司さんと川久保玲さんが大々的にコレクションに取り入れ、「黒の衝撃」として業界を震撼させたのは有名な話。禁欲的なイメージが強かった黒を基調に、左右非対称にデザインされたルックの数々は、かつての当たり前を打ち壊すエポックメイキングな出来事でした。

そんな山本さんが現役でデザイナーを務めるヨウジヤマモトの展示会に行くと、いつも服の持つ力に圧倒されます。フロアに並ぶ服は、黒がメイン。といっても、一着一着が全く異なる個性を持っています。光の反射率や布の重なり、濃淡、生地の落ち感、複雑なパターンに及ぶまで、さまざまな要素を繊細に操り、多様に表現しているのです。たとえ一枚の生地をそっと縫いつなげたようなシンプルなドレスでも、実はドレープの出方や素肌の見え方まで細やかに計算されていて、その均衡が神秘的な美しさを生んでいます。一色という制限下にあるからこそ、いつもスルーしてしまうような些細なことにまで意識が向き、衣服や布の持つ美しさに、改めて気づかされます。

ヨウジヤマモトのフード付きショートジャケット
Yohji Yamamoto フード付きショートジャケット ¥73,000

はっとするように美しい背面など、黒に秘められた魅力を語りだすと止まらないのですが、その静謐で奥深い世界に魅了され、先日はじめてヨウジヤマモトのアイテムを手に入れました。それが、こちらのフード付きショートジャケットです。

ヨウジヤマモトでは、限られた種類のオリジナル生地だけを使用し、デザインをしているのだそう。このジャケットで用いているのは、通年で採用しているというシワになりにくい素材。落ち感のある軽やかなテクスチャーなので、一年を通して着まわすことができます。“黒”と一口に言ってもその中には無限の多様性があるのは先述した通りですが、この一着を買って改めてそのことを実感しています。例えば、黒のロングコートにこのとろみのある素材を重ねると、揺れ感やたわみに微妙な変化が出て奥行きが生まれます。ゆとりを持って作られたデザインは、レイヤードにもうってつけ。オールブラックのスタイルも、ぐっと楽しみの幅が広がりました。

ヨウジヤマモトのフード付きショートジャケットのバックスタイル
背面にはシンプルなバックベルトが。

大き目のフーディにはチンストラップがついているのですが、全て閉めると顔をすっぽり覆うバラクラバのような見た目に。インに仕込んでフードだけ出すのも素敵そうです。

人間の手の可能性を信じ、今も手引きの型紙にこだわり続けているというヨウジヤマモト。そのストイックな姿勢は、時代に左右されないファッションを確立しているなと思います。「ヨウジの服は、一生着られます!」とプレスの人がいつも真っ直ぐに目をみてお話してくださるのですが、ミニマル&シックのトレンドが落ち着いても、これから長く大切に育てていきたいなと思う一着です。

ヨウジヤマモトのフード付きショートジャケットの着用イメージ
この日は春アウターとしてワンピースの上に重ねました。ボタンを掛け違えて変化形で着ても素敵です。
エディターSASAYAMAプロフィール画像
エディターSASAYAMA

周囲の人の着こなしが気になって仕方ない私服ウォッチャー。
街でも目を光らせています。ミニマルで、少しひねりのある服が好きです。

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