ユーモアたっぷり! この春おすすめのファッション展覧会

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展といい、「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」に、最近では「ティファニーワンダー 技と創造の187年」展など、モード界隈の展覧会が大盛況です。

ただいま、群馬の前橋にあるミュージアム、アーツ前橋で開催中の「ここに いても いい 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口」も、大変面白かったので、是非皆さんに足を運んでみていただきたい!

SPURでもおなじみ、リトゥンアフターワーズのデザイナーであり、数々の才能を世に送り出しているファッションの私塾「coconogacco」を主宰している山縣さん。彼の美術館での初の個展が6月16日まで開催中です。実は私、山縣さんと同郷かつ同世代ということもあり、応援したい気持ちもあって初日に行ってきました!

前橋の話題エリアにあるアーツ前橋

アーツ前橋の外観の写真
入場料は一般800円

会場であるアーツ前橋は、話題の白井屋ホテルの裏手にあり、昨年誕生したアートスポットまえばしガレリアとも目と鼻の先。かつては商業施設だったようで、リトゥンアフターワーズの服を着たマネキンが並んでいるウィンドウが目印です。

七服神がお出迎え

山縣良和の七服神の写真

展覧会は6つの章に分かれていて、無料で見れる1階の第0章「バックヤード」を通って、階段を下りながら第1章に進みます。「バックヤード」はブランドのアーカイブスや着想源となった本、山縣さんのスケッチなどがレイアウトされており、クリエイティビティの断片を堪能できます。ここは最後にも来れるので、余韻に浸りながら積まれた写真集などをチェックするのもおすすめです。

階段を下りながら上を見上げると、山縣さんの名前が広く知られるきっかけにもなった2012年のショー「THE SEVEN GODS(七服神)」に登場した熊手のような作品が! よく見ると、くっついているのは幼少期に一緒に寝ていたようなぬいぐるみや五月人形の兜、ダルマに招き猫! なにこれ面白い~、と思うと同時に、万物にすがる祈りのような念も伝わってきて、これこそ山縣さんの魅力と、しょっぱなから引き込まれます。2011年の東日本大震災をきっかけに制作されたコレクションですが、ユーモアを交えながらシリアスな問題に切り込む姿勢は見習いたい。

山縣良和のドレス作品の写真

「神々、魔女、物の怪」と題した第1章は、ヤマタノオロチなど神話と身近だった故郷を勝手に思い出しました。

二度見三度見してしまう作品群

山縣良和の作品の写真

続く第2章「集団と流行」以降は実際みていただきたいので、超抜粋。

ブルーシートに、フリーマーケットにありそうなキッチュなアクセサリーがくっついている。なんなら、ブルーシート布団に寝ているマネキンも笑。2000年代にセントラル・セント・マーチンズ美術大学に学び、ジョン・ガリアーノに師事していた頃の日常も忍ばせているよう。

山縣良和の2019年のコレクションの展示写真

2019年に上野公園の噴水広場で披露した「アフター・オール」コレクションの一連。「フローティング・ノマド」と題し、内戦で住む場所を追われた人々の状況に心を動かされて生まれたドレス群は、とても美しくて、かわいくて、圧巻です。この長い通路の脇にベンチが設置してあるので、腰を下ろし、ゆっくりと鑑賞していただきたいです。

山縣良和の個展の写真

さらに進むと、トラックにタヌキ! 群馬は繊維産業を担ってきた土地ということもあり、伊勢崎銘仙などの反物をそれぞれが手にしています。トラックを追いかけるように、スケボーにのったタヌキの集団も見ものです。一匹ずつ観察したくなります。

山縣良和の個展の写真

第4章「変容する日常」では、群馬県内の空き家などから家具や家電を持ち込み、自作のアイテムと組み合わせて展示。なにがなんだかわからないけど、強烈なパワーがあります。

山縣良和の個展の写真

個人的に好きなのは、地球を囲む“黒ずくめの組織”(青山剛昌先生も同郷の誇りです!)。山縣さんの意図はわかりませんが、私は一瞬にして『名探偵コナン』の世界に脳内トリップしたのでした。

限定ドリンクとともに解説を読む楽しみ

ロブソンコーヒーの限定ドリンクの写真

最後の第5章「ここに いても いい」は、山縣さんのパーソナルな思いから新作が生まれました。朗らかで、暖かい気持ちに包まれる空間。優しい余韻を嚙みしめるべく、最後は、併設しているカフェ「ロブソン コーヒー」で、展覧会をイメージした、『赤いチェック』カフェラテストロベリー(690円)をぜひ。
冒頭で「副音声的な展示解説」なる資料をいただけるのですが、キュレーターの宮本武典さんの文章が大変すばらしく、めちゃくちゃ読みやすいのでコーヒーのおともに読んでみてほしいです。ちなみに、各章の解説文も宮本さんが手掛けられていますが、今まで見た展覧会の中でもトップクラスに文章がいいです!

きっかけは、面白い、変だな、なんか気になる、で十分だと思うのですが、解説を読み、作品を反芻することで、山縣さんの哲学の深淵を覗いている感覚になります。

長々と書いてしまいましたが汗、満足感たっぷりの展覧会です。ぜひ多くの方に行ってみてほしいです。

*興味深いアーティストトークも予定されていますので、そちらも是非チェックを!

エディターKINUGASAプロフィール画像
エディターKINUGASA

顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。

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