2025.08.16

まだ間に合う! ソウルで開催中の【トム・サックス展】は渡韓の価値あり

先月、ソウル出張へ。急遽2時間だけ空き時間ができて、見たかった展示に駆け込みました。春からスタートしているトム・サックスの個展「Tom Sachs Space Program: Infinity」。膨らんだ期待値以上に素晴らしく、少しだけレポートさせてください。

韓国 ソウル アート展 トム・サックス Tom Sachs Space Program: Infinity

「Tom Sachs Space Program: Infinity」の会場は、ザハ・ハディド設計のDDP(東大門デザインプラザ)地下2階にあるミュージアム。スペーシーで荘厳な空間は宇宙をテーマとした今回の展示とぴったり合います。

2007年から続くプロジェクトの集大成

日本でも人気の高いアメリカ人の現代アーティスト、トム・サックス。2019年には東京オペラシティ アートギャラリーで初の日本美術館初個展も開催、そちらに足を運ばれた方も多いのではないでしょうか。彼が2007年から取り組んでいる「スペースプログラム」シリーズの200点余りの作品が集結したのが、今回の「Tom Sachs Space Program: Infinity」。初公開となる新作10点以上が公開となった、歴代最大規模の展示です!

彼の代名詞と言えるのが“ブリコラージュ”という技法。段ボール、ダクトテープ、合板など、日常生活の中にある材料から、独創的な工夫や発想で新たな作品を生み出すもの。身の回りにある素材や道具がトム・サックスならではの皮肉とユーモアによって新たに生まれ変わる作品を前にすると、屈託なくワクワクできる。現代アートに詳しくなくとも、作品の背景を詳しく理解せずとも、楽しむことができる。そんな“開かれている”点も、彼の作品の魅力だと思います。

特に今回は宇宙がテーマ。みんなが童心に返って心躍る内容となっていて、私が足を運んだ時には現地の男の子が目を輝かせながら展示を見ていたのも印象的で。「わかるわかる、これはたまらないよね」と勝手にうなずきながら、一緒に楽しみました。

韓国 ソウル アート展 トム・サックス Tom Sachs Space Program: Infinity

月着陸船がお出迎え。トム・サックスならではのDIY感あふれるスペースシップはレトロなSF映画に登場するような愛らしさで、見ているだけで心躍ります。

韓国 ソウル アート展 トム・サックス Tom Sachs Space Program: Infinity

宇宙船のフライト・ディレクターに扮したトム・サックス。韓国生まれのビデオアートの巨匠、ナム・ジュン・パイクの作品を彷彿とするモニターが連なる大型作品は圧巻!

デジタル時代に魅力を放つ“手触り”のある作品

圧巻の大型作品はもちろんですが数㎝単位の極少作品まで種々雑多に並ぶ構成も見どころ。宇宙オタクで知られるトム・サックスの“変態的なこだわり”が随所に光り、見る度に発見があって時間を忘れる展示です。今回、移動時間を含めると展示をみられるのは1時間ほどだったのですが正直、全然時間が足りませんでした……。

展示途中にデザインされた彼の“言葉”も読みごたえがあり、印象的だったのは写真に残したもの。様々な技術が進化し完璧を追い求めることができる時代にあえて不完全で自らの手触りが活きる作品を追い求める、アーティストのキャラクターが表れた発言です。

荒唐無稽とも言えるアイデアを実に真剣に向き合い“DIY感”で実現した作品群は、ぱっと見て心が躍り、じっくり見ていると時間を忘れるものばかり。彼が作り上げた宇宙は、一度足を踏み入れるとなかなか抜け出せないので、ぜひしっかり時間に余裕を持ってお出かけください。

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韓国 ソウル アート展 トム・サックス Tom Sachs Space Program: Infinity

混沌とした作業スペース。微細な部分にもこだわりが詰まっていて、眺めていると時間が溶けていきます。

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韓国 ソウル アート展 トム・サックス Tom Sachs Space Program: Infinity

こちらのヨーダは5万台の分解された携帯電話から抽出した金で作られたもの。サイズは数㎝の極少作品ながら、存在感は絶大。

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韓国 ソウル アート展 トム・サックス Tom Sachs Space Program: Infinity

トム・サックスのアーティストとしての哲学に触れる言葉。展示解説も含めて基本的に英語と韓国語で表示されています。

散財注意報、グッズも大充実です

エキシビジョンはグッズも大、充、実。こちらもポスター、ステッカー、Tシャツ……それぞれデザインのバリエーションも豊富なので目移りすること間違いなし! 私は迫りくる制限時間の中で悩みに悩んで、Tシャツとステッカーをゲットしました。本当はスペースシッププログラムのスタッフパスを作ることができたのですが、こちらは時間がなく叶わず……。くれぐれも時間に余裕を持ってお出かけください(大事なことなので何度でも言う)。

展示の会期は9月7日まで。既に渡韓の予定がある方は足を運んでみてください。特に予定がないという方もこのために出かける価値のある内容となっているので、気になっていたけどどうしよう? なんて思う方はぜひ駆け込みを! 私も何とかもう一度足を運べないかと目論んでいます。

Tom Sachs Space Program: Infinity グッズ トム・サックス

Tシャツはバッグプリントにはトム・サックスが描いた宇宙船のイラストが。大失態でレシートを紛失してしまったのですがTシャツは49000ウォン、ポストカードは600ウォンほどだった記憶です。

展覧会の詳細はこちら

トム・サックス 個展「Tom Sachs Space Program: Infinity」

会期:開催中~2025年 9月7日(日)

会場:東大門デザインプラザ Museum B2、ソウル、韓国

Hyundai Card Culture Project 29

開館時間:10:00 ~20:00(最終入場19:00)

休館日:月曜日

観覧料:20000ウォン

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エディターHA

ワードローブの中心はデニムとメンズのシャツ。『スターウォーズ』シリーズに出てくるイウォークに似た犬と暮らしています。

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