先日遅めの夏休みを取って旅をすることに! 都会の喧騒から離れたい、しかしがっつり自然に飛び込んでカロリー高めのアクティビティをする体力はない、それでいてカルチャーに触れたりショッピングも楽しみたい、何よりおいしいもの食べたい……と自分でも呆れるほど自由に書き連ねたワガママを叶えてくれる場所はどこか……たどり着いた答えは韓国の“済州島”でした。10年ぶりに訪れた場所ですが、日本から2時間ほどで行ける済州島は期待通りの素晴らしさ。特に10月は暑くも寒くもなく、太陽に照らされた緑が本当にきれいで、景色を眺めているだけでも癒されました。最近はソウルのように新しいカルチャースポットなども増えていますが、それでも時間の流れがスローに感じるゆるやかさ。自然あふれる西帰浦市と都会的で賑やかな済州市、違う魅力をいいとこどりできる上に、それぞれも1時間ほどで行き来できるのも理想的。またすぐカムバックしようと誓った済州島のいちおしスポット、トップ3についてお話をさせてください。
ピンクミューリーが広がる【セミドンサン花畑(새미동산꽃밭)】
秋の済州島を彩る草花と言えば、コスモスやススキのほかピンクミューリーが有名です。ミューリーグラスという亜熱帯植物の一種で、ふわふわとした綿菓子のビジュアルは何とも愛らしい。その幻想的な風景を堪能できるのが【セミドンサン花畑/새미동산꽃밭】です。
済州空港から車で40分ほどの距離にある農園が運営する花畑で、入場料を2000ウォンで物語の中に迷い込んだような景色を堪能することができます。“映え”には興味がないタイプですが、あまりに絵になるもので思わずあちこち写真を撮って、「ドラマティックな絵が撮影できそう」と休みの日なのに仕事のことを考えてしまったほど……。実際、ウェディングフォトを撮影するために訪れているチームにも遭遇しました。
撮影をすると雄大な情景にも見えますが実はここ、“広すぎない”のもいい。20分ほどで全体を散策できる規模なので気軽に立ち寄れるのも、疲れた体のまま旅をする大人の皆さんにおすすめしたい理由です。「私たちも花に癒される年になったね」なんてしみじみと不惑を超えた女二人組で散策をしていましたが、年代に関わらず心躍る場所であること間違いなし。ちなみにセミドンサン/새미동산は近くでみかん農園やペンションを運営していて少しだけ場所が離れているので、花畑を目指す方は꽃밭と記載された方を目指してくださいね。
味わい深い古漬けキムチとサムギョプサルの【ジンソン食堂/진성식당】
済州島は美味しいものがいっぱい太刀魚のお刺身、アワビのカルグッス、チキン……色々堪能した中で私がいちばん楽しみにしていたのはソウルに住む友人におすすめしてもらった【ジンソン食堂/진성식당】。こちらはムグンジと呼ばれる古漬けキムチとサムギョプサルを提供する食堂。韓国では時間を置いて熟成したキムチが好まれますが、こちらで提供されるのは3年物。ムグンジが大好物の私は、このお店のおいしさを友人に力説されて以来、楽しみにしていたのです。
優しい店主の方に時折ダメだしされながら肉を焼いたのち口に放り込んだ時の幸福感。旨味と酸味が絶妙なバランスを保ったムグンジと軽やかな脂の乗った豚肉との相性たるや! あぁ、また食べたい! こちらは現地のグルメ番組でも取り上げられていて、隣に座った女の子2人組と話したところ評判を聞いてソウルから食べに来たと教えてくれました。ふっと横を見ると肉を焼き終わった店主のオモニが寝転がってテレビを見ている……そんなチルなムードまで最高の名店。お店を出る頃には心もお腹もしっかり満たされて元気100倍に。ぜひ出かけてみてください!
深呼吸したくなる【伊丹潤美術館/유동룡미술관 】
自然あふれるリゾート地ながら知的好奇心をくすぐるアートスポットも充実しているのも済州島の魅力。いくつか足を運んだ中で、大好きになってしまったのが【伊丹潤美術館/유동룡미술관 】です。ユ・ドンリョンとは在日韓国人2世として東京で生まれ、伊丹潤という通名も持った建築家。彼が2000年前後から晩年まで活動の拠点にした済州島に、その足跡を辿るミュージアムが2022年に建設されました。設計は同じく建築の道にいる娘のユ・イファ氏が担当。
美術館としては小規模ながら、何時間でもいられる心地の良さ。「現代建築に本質的に欠けている何かがあるとしたら、人間の温もりとか建築における野生美だろう」と館内に記された彼の言葉通り、コンクリート打ちっぱなしのモダンなムードとそこから見える済州島の荒々しい自然の様子が調和した空間が、ずっといたくなる引力を持っているんです。言葉や絵画的才能にも恵まれた彼の貴重な資料はもちろん、展示の構成などもひとつひとつセンスが良くて心が躍る。知的で、優しくて、清らかで。美術館に求めるものが全部、ここにあるような気がしました。
さらにこの美術館ではチケット料26000ウォンにお茶と茶菓子代も含まれていて、展示を楽しんだあとにティータイムを楽しむことができるんです! そのホスピタリティにも惚れ惚れ! 再訪を誓った済州で、また必ず足を運びたいと思う場所のひとつです。これから寒くなりますが、ソウルよりは少し暖かい済州島。「最近なんだか疲れているな」と思ったら、出かけてみるといいかもしれません。
名前:セミドンサン花畑/새미동산꽃밭
住所:제주 제주시 조천읍 와흘리 2081
名前:ジンソン食堂/진성식당
住所:제주 서귀포시 대정읍 추사로 49-9
名前:伊丹潤ミュージアム/유동룡미술관
住所:제주시 한림읍 용금로906-10
ワードローブの中心はデニムとメンズのシャツ。『スターウォーズ』シリーズに出てくるイウォークに似た犬と暮らしています。








