広島土産のふりかけ【旅行の友復刻版】は、「御飯にかけてステキにうまい」平和な日常の滋味

SPUR9月号「被爆80年の広島で、いま伝える/耳を傾ける」の取材で広島を訪れました。被爆体験証言者のおふたり、箕牧智之さんと梶矢文昭さん、写真家の上原沙也加さん、インタビュアーの庭田杏珠さんはじめ、得難い出会いに恵まれてできた記事です、ぜひご覧ください。個人的には数年ぶりとなる広島の街の風景と、地元の人々のあたたかさに触れる旅でもありました。

原爆遺構である袋町小学校平和資料館などを訪ねる途中、本通りの「広島夢プラザ」に立ち寄りました。広島県内各市町村の特産品が集まる楽しいお店、目を奪われたのは、その棚に並んだ愛らしい缶入りのふりかけ「旅行の友復刻版」です。

レトロな缶入りふりかけは、なんと大正生まれ! 

広島 ふりかけ 旅行の友 復刻版 田中食品 レトロ缶

田中食品「旅行の友復刻版」¥1,080

携帯にちょうどいいサイズの缶には、「御飯にかけるとステキにうまい」「滋養豊富」「軽便副食」の惹句とともに「TRADE MARK 旅行の友」とあります。そもそもふりかけを携帯するなんて考えたことはなかったが、このレトロなデザイン、なんとも可愛い!

旅行の友は、広島で創業120年の元祖ふりかけメーカー田中食品の、100年以上にわたるロングセラー。大正時代の初めに開発された商品で、当時では画期的な容器だった筒型の缶容器入りで販売されたと解説されています。予想よりはるかに長い歴史を持っていました! そして、広島を中心に、西日本ではポピュラーなふりかけだそうですね。

小魚とあおのり、ごまの香ばしさと風味が広がるごはんのお供!

広島 ふりかけ 旅行の友 復刻版 田中食品 レトロ缶 小魚 ごはん 

香ばしくて、旨味が深くて、懐かしい味! 白ごはんにも合い、おにぎりにしても美味しそう!

自宅へのお土産に持ち帰り、早速炊きたてごはんにふりかけてみました。缶の容器と蓋には穴が空いていて、ひねって合わせるとささっと適量が出てきます。さくさくとした小魚の粉と、あおのりと、ごまがたっぷり。醤油味で香ばしく、なるほど確かに”ステキにうまい”! 「栄養価の高いものをいつまでも美味しく食べてもらいたい」という「子を想う親心から生まれました」と説明文にある通り、カルシウム豊富で旨味があります。派手じゃない、本当にごく普通のおいしさ。なぜかじんわりと懐かしさが込み上げます。

かつての軍都・呉と被爆地・広島の、穏やかな日常をかみしめながら味わう

広島 ふりかけ 旅行の友 復刻版 田中食品 レトロ缶 この世界の片隅に こうの史代

こうの史代「この世界の片隅に」」(上・中・下巻)各¥648 双葉社刊

旅行の友のパッケージには、大正時代の特急「富士」の蒸気機関車に、飛行機に乗った男の子、瀬戸内海らしき海をわたる船も描かれています。田中食品の前身、田中商店は、創業当時から、呉にある海軍に食品を納品していた歴史があります。旅行の友は、当時の陸軍・海軍から「持ち運びに便利で、日持ちし、栄養価の高い食品を」との要請に基づいて1916年に生まれ、太平洋戦争中も作り続けられたものだそうです。

戦時中の呉と広島と聞くと、思い出すのはこうの史代さん原作のコミックで、アニメ映画化もされた名作『この世界の片隅に』。ふたつの街を舞台に、当時の何気なく、かけがえのない日常生活が描かれ、8月6日の原爆投下、8月15日の玉音放送、その後の日々へと続いてゆきます。主人公のすずさんも、旅行の友や、このイラストに描かれたような風景を見かけたかしら。そんな思いで、白いごはんをおいしく食べられる現在の私の日常を噛み締めます。そして戦争と原爆に苦しみ、いまも戦禍の暴力と飢餓に苛まれる世界の人々のことを考えずにはいられません。平和な日々の訪れを、祈ります。

今回紹介した商品はこちら!
タナカのふりかけ 旅行の友復刻版 20g

商品名

タナカのふりかけ 旅行の友復刻版 20g

ブランド

田中食品株式会社

価格

¥1,080

小魚粉末、ごま、あおのり等の素材の味を生かしたカルシウム豊富なふりかけ。大正時代の初めに開発されたロングセラーで、当時では画期的な容器だった筒型の缶容器を復刻

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エディターKUBOTA

幾星霜をこえて編集部に出戻ってまいりました。活字を読むこと、脂と塩気、2匹の保護猫、平和と雑談を愛します。

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