GWは静岡へ。オートクチュールの裏側をライブ体験できる演劇がやってくる【SHIZUOKAせかい演劇祭】

フランスから届いた写真には、レースと刺繍、きらめくビーズ、ディテールと世界観を伝えるスケッチ。手を動かす職人たちの姿も見えます。オートクチュールの制作現場でしょうか。いいえ、これは舞台衣装とその場面写真。ストラスブール国立劇場製作、カロリーヌ・ギエラ・グェン演出の『ラクリマ、涙 ~オートクチュールの燦めき~』という作品が、まもなく来日を果たします。

架空のメゾンで働く職人たち、物語は現在。オートクチュールと「涙」の関係とは? 

ラクリマ オートクチュールの燦き フランス 演劇 来日公演 舞台衣装 SHIZUOKA せかい演劇祭
『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』舞台衣装制作ノート

ストーリーはこのように始まります。

2025年、英国王妃のウェディングドレス製作のオファーを受けた、パリの名門メゾン・べリアナ。アランソンのレース工房、そしてインド・ムンバイの刺繍工房と協働し、厳格な守秘義務のもと何千時間にも及ぶ作業の末、歴史を刻む運命のドレスは生み出されるーー

ラクリマ オートクチュールの燦き フランス 演劇 来日公演 舞台写真 SHIZUOKA せかい演劇祭
『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』場面写真 ©Jean-Louis Fernandez

場面写真を見ると、白衣姿で職人を演じる俳優たちが立ち働き、実際にオートクチュールの作業場に立ち会っているかのような空間構成。舞台上では物語の進行とともに、ドレスの制作がライブで繰り広げられます。

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『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』衣装制作の舞台裏

舞台のための衣装は実に本格的。スタッフの細やかな手仕事により準備されています。オートクチュールのバックステージを描く舞台のバックステージ写真に、虚実入り乱れ目眩く感覚に……。

ドキュメンタリーや映画、展示など、ファッションの裏側を見られる機会はこれまでもさまざまにありましたが、目の前のライブとして体感できる舞台はなかなかありません。過去、野田秀樹演出の『キル』というファッション業界を描いた演劇の名作があり、歌人の俵万智さんがこちらのテーマで公演の素晴らしさを語っていました。演劇は一期一会のアートだからこそ、ずっと心に残り続ける。まして、今この時代に海を超えて届けられる作品のなんと貴重なことか。これはぜひ生で観てみたい。

女性演出家が描き出す、ファッションの世界に潜む暴力と支配の構造

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『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』場面写真 ©Jean-Louis Fernandez

演出家のカロリーヌ・ギエラ・グェンは、現在、フランスの国立劇場で唯一の女性芸術監督で、インドとベトナムにルーツを持つ1981年生まれ。フィクションの力を用いて社会問題を鋭く描く作風で注目を集めています。

本作はダイアナ妃のドレス制作秘話を着想源に、レース職人や刺繡職人たちとの交流を経て構築されたもの。女性が受ける社会的・家庭的暴力、ファッション業界におけるムンバイの職人たちが受ける精神的・身体的暴力の構造が「秘密」をテーマに炙り出される、すぐれて問題意識の高い作品です。ストラスブール国立劇場での公演記録はこちら。アヴィニョン演劇祭やドイツ・シャウビューネなど、ヨーロッパ各地でツアーを行い称賛を受けているそう。

「わざわざ観に行く」「わざわざ来日公演する」価値がある国際演劇祭が、静岡にある

ラクリマ オートクチュールの燦き SHIZUOKA せかい演劇祭 静岡舞台芸術劇場 SPAC
ゴールデンウィークに開催される、「SHIZUOKA せかい演劇祭」のパンフレット

『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』はSHIZUOKAせかい演劇祭による招聘公演。5月4日-6日に静岡芸術劇場にて上演されます。

あ、ちょっと待ってください。いま、「静岡か〜、ちょっと遠いな」って思った方、いますよね? いや違うんです。この静岡の演劇祭、なんと30年にわたり毎年開催されており、国際的にも実は有名。主な会場は磯崎新の設計による静岡芸術劇場と舞台芸術公園。また、家康ゆかりの駿府城公園と静岡市街で「ふじのくに野外芸術フェスタ」とストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡」が同時開催されます。国内外からはるばる訪れる演劇人、演劇ファンも多数。ここでしか体験できない価値があり、交流があるのです。

世界各国から演劇、ダンス、大道芸などクオリティの高いパフォーミングアーツが集まるゴールデンウィークの静岡は、今年からPLAY!ウィークという名でより盛り上がりを見せる模様。富士山と新緑のもと、観劇の合間に屋台やフェスティバルバー、無料イベントも楽しめる演劇フェス、私もまるごと楽しみにいってきます!

『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』
5月4日(日・祝)16:00
5月5日(月・祝)13:00
5月6日(火・振休)12:30
会場:静岡芸術劇場
上演時間 175分(休憩なし)
上演言語/字幕 フランス語、タミル語、英語、フランス手話上演/日本語・英語字幕
全席指定
作・演出 カロリーヌ・ギエラ・グェン
製作 ストラスブール国立劇場(フランス)
字幕翻訳 平野暁人


https://festival-shizuoka.jp/program/lacrima/

4月26日(土)〜5月6日(火・振休)
SHIZUOKAせかい演劇祭2025
https://festival-shizuoka.jp/

PLAY!ウィーク
https://play-shizuoka.jp/

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エディターKUBOTA

幾星霜をこえて編集部に出戻ってまいりました。活字を読むこと、脂と塩気、2匹の保護猫、平和と雑談を愛します。

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