普段は小説が一番好きなジャンルなのですが、先日通っているネイリストさんがおすすめしてくださったエッセイがとても面白かったので、紹介させてください。
タイトルは「海からの贈物」
最初にサロンで紹介された時は、その美しい浜辺の装丁から「海の環境についての本かしら」と安直に考えてしまったのですが、これは約60年前に書かれた、アメリカ人女性、アン・モロウ・リンドバーグよるエッセイです。著者が日常を離れ、とある浜辺に一人で暮らす二週間のあいだに、自分について、女性について、社会について、考えを巡らせ筆を走らせるという体裁です。貝殻になぞらえて章が展開していくので、「海からの贈り物」というタイトルなのです。
約60年前に書かれたとは思えないくらい、「わかる!」に溢れていて、とても面白く読みました。当時のアメリカは家事にまつわる文明機器も発達し、ウーマンリブの機運も高まり、かつての時代を生きてきた女性より生きやすくなっているはずなのに、その空いた時間や余裕も、料理や、買い物や、請求書や、医者や、歯医者や、家族の診察や、友人との集まりの準備や、手紙や、電話や、送り迎えなどのことで絶えず頭を使っていなければならない、といった内容を目にした時の驚き! 今と全く同じです。絶対に昔より楽になっているはずなのに、こんなに忙しないのはなぜでしょう! 生活とはそういうものなのかもしれませんが、それに対して本書では、愚痴や具体的な時間の捻出方法ではなく「どうしたらそんな中で自分自身と調和がとれた状態」を作れるか、について言及されています。
昔の本なので、女性観については時代なりの内容に思えることもありますが、今読んでもはっと気付かされることや我が身を振り返ることが多く、これからも疲れた時は読み直したいなと思える本になりました。
読み終わってから、彼女が飛行家であり文筆家であり、6人の子供を持つ母であり、戦災の罹災民を救うために挺身にあたった活動家でもあることを知りました。でも、本編ではその辺りのエピソードはほぼ書かれておらず、一人の女性として生き方について考えを巡らせています。生活に追われている、と感じる人はきっと共感できるのではないでしょうか。
気軽に読みやすいボリュームです
とっても薄い文庫なので、持ち歩きやすく、どの章からでも読めるので、外出のお供におすすめです。