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モダンな感性で未来を切り開く

クロエ ウーマンは
前進する

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モダンな感性で未来を切り開く
クロエ ウーマンは
前進する

クロエの2023年春夏コレクションは、これまで以上にファッションと地球環境の未来について問いかける。「核融合エネルギー」からインスパイアされたパワフルでいてモダンな服をまとい、希望ある明日に向けての一歩を踏み出す

STYLE 02

環境負荷の少ないウール製のチュニックは、今季らしいヘルシーな肌見せがかなう。ハンドクロシェとリングの組み合わせに、メゾンの技術が光る。フラップバッグは、クラシックな面持ちのボックスカーフレザーを使用した。

ドレス¥694,100・ブラトップ¥57,200・ショーツ¥112,200(すべて参考価格)・バッグ「ペネロペ」フラップバッグ〈H23×W28×D10〉¥447,700/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

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STYLE 03

メタルパーツとニットを組み合わせたテクニカルなドレスは、オプティミスティックなカラーが視線を奪う。足もとを飾るのはクロエのシグネチャースニーカー 「ナマ」から新たに登場したウェッジソールサンダル。すべてのパーツに環境負荷の少ない素材を使用している。ドレスのエフォートレスなムードとリンクさせて。

ドレス¥694,100・ブラトップ¥57,200(ともに参考価格)・靴¥103,400/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

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STYLE 04

バイカースタイルを想起させるジャケットは、異なるレザーをパッチワークし、ハンドメイドの風合いを加えた。同じくステッチやレザーブレイドがアクセントの「ペネロペ」を合わせ、メゾンのクラフツマンシップを全身でまとう。

ジャケット¥484,000・ブラトップ¥218,900・ショーツ¥57,200(すべて参考価格)・バッグ「ペネロペ」ラージショルダー〈H29×W44×D14〉¥415,800(参考価格)/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

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STYLE 05

サイズ違いの無数のナッパレザー製のコインパーツがあしらわれたドレスは、ドラマティックな夜を彩る。光を受けて神秘的に輝く様が、想像力をかき立てる。ゆるやかなフレアシルエットと相まって、まるで夜の海にすむ人魚になった気分に。コルクソールをシルバーにペイントしたプラットフォームサンダル「オディナ」を添えて、さらなるきらめきを演出する。

ドレス¥1,343,100(参考価格)・靴¥140,800/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

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STYLE 06

今季のコレクションのテーマを最も強く反映するルックのひとつである、ソフトシルクニットで編まれた革新的なメッシュのタンクドレス。グラデーション状に並ぶ大小のサークルモチーフがグラフィカルな効果をもたらし、どこか近未来的な佇まいだ。対してシューズは、リラクシングなサンダルを合わせて、テイストのミックスを楽しむスタイリングを。

ドレス¥484,000・パンツ¥57,200(ともに参考価格)・靴¥118,800/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

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STYLE 07

ブラックのウォッシュデニムのドレスにちりばめられたメタルパーツが、神秘的なムードを醸す。スタッズやアイレットが星座のように描くのは、核融合エネルギーを象徴する円形モチーフだ。新アイコンバッグ「ペネロペ」は、デニムと相性がよく、カジュアルに持てるキャラメルをチョイスして、デイリーに映えるドレスルックを完成させて。

ドレス¥532,400・バッグ「ペネロペ」ミディアムショルダー〈H24×W35×D13〉¥350, 900/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

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“デザイナーとしての私の役割は、女性たちをさらに強くすること。
自分の美しさをより実感できるようにし、彼女たちに心地よさを提供します”

 

Gabriela Hearst
1976年、ウルグアイのパイサンドゥ県生まれ。モデル活動を経てニューヨークに移り住み、自らのブランドCandelaのデザイナーに。2015年秋にガブリエラ ハーストを設立。2021-’22年秋冬コレクションから、クロエのクリエイティブ・ディレクターも務める。

女性の自由と自立を願った創業者のスピリットを引き継いで

ガブリエラ・ハーストがクロエのクリエイティブ・ディレクターに就任してから、早くも2年がたった。2020年、パンデミックの最中に歴史あるメゾンを率いるという重責を引き受け、以来プレを含む7回のコレクションを発表した彼女に「2年の間に成し遂げた仕事に満足していますか?」と問うと、「私はゴールを高く設定するという意味において、野心的な人間なんです」との答えが返ってきた。つまり、「簡単には満足しません」と言い換えることもできるのだろう。強い使命感を備えた、彼女らしい言葉だ。

「そうは言ってもクロエのクリエイティブ・ディレクターは大役ですから、自分を抑える必要がありますし、新体制への移行はひとりでやったことではありません。スタッフ全員の共同作業の中で、自分たちが信じることを主張し、上を目指してきました。肉体的にも精神的にも楽ではなかったけれど多くを学びましたし、ひとりのプロフェッショナルな女性として強くなったと実感します。だから、このチャンスを与えられたことに感謝の気持ちでいっぱいです」

故郷はウルグアイ、父が所有する広大な牧場で育ち、ニューヨークでデザインの経験を積んだ彼女が独自のブランド、ガブリエラ ハーストを設立したのは2015年のこと。“誠実なラグジュアリー”をコンセプトに掲げた服作りで脚光を浴び、’20年には「CFDAファッション・アワード」で“アメリカン・ウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー”に輝いている。そんなガブリエラにクロエが白羽の矢を立てたわけだが、彼女は創業者ギャビー・アギョンに抱く敬慕の念を込めて、ギャビーの生誕100周年の日にあたる’21年3月3日にデビュー・コレクションを披露するに至った。

「端的に言って、ギャビーは途方もなくカッコいい女性だったんです。彼女は1952年に友人の名前を冠したこのブランドをスタートさせましたが、裕福な家庭の出身で、働く必要などなかった。なぜ仕事をしているのかと周りの人たちにしばしば尋ねられて、『働きたいから』と答えたとか。ギャビーは自分自身とほかのあらゆる女性のために、自由と自立を獲得したいと願っていたのです。そしてセーヌ川左岸に居を構え、そこに集まる文筆家などと交流し、当時の最先端の思想をクロエに反映させていました。彼女の価値観は極めて現代的ですし、今もそのDNAは健在で、私もそこに立ち返ることからスタートし、最初のコレクションでまずギャビーに敬意を表しました」

そしてこのときから実践していたのが、サステイナビリティを向上させる意欲的な取り組みだ。すでにガブリエラ ハーストで業界初のカーボンニュートラルのショーを行うなど、先駆的スタンスを打ち出していた彼女だが、クロエも社会的責任においてファッション界を牽引するブランド。

「今までに培った知識や技術をクロエでスケールアップさせて、多くのことが可能になった」とガブリエラは言う。また、コレクションのテーマで気候変動問題の解決策を提案しているのも彼女ならでは。先シーズンの“リワイルディング(再野生化)”に続いて、’23年春夏コレクションでは、長年研究が進められている核融合エネルギーに着目した。温室効果ガスを排出せずにほぼ無限に供給できるとされる、革新的なクリーン・エネルギーだ。

「自然とのバランスが取れた服作りを試みる中で、私はひとつの壁に直面していました。それは、世界の85%が化石燃料で動いているという現実です。この破滅行為を終わらせなければなりませんし、核融合エネルギーについて調べ始めたとき、理想的な解決策を見つけた気がしました。核分裂による原子力エネルギーとは違って、燃料になる水素のアイソトープは究極的には水です。廃棄物の放射能は12年程度で減衰し、しかも武器開発に転用されにくいんですよね。実用化までには30年以上かかると言われていますが、確実にゴールに近づいている。私は自分のポジションを最大限に活用し、核融合エネルギーのことをより多くの人に伝えたい。ファッションで気候変動問題そのものを解決できるわけではありませんが、クロエには前向きなストーリーを届ける手段がありますから。人々がどんな解決策があるのか理解し、希望を抱いてもらえるよう最善を尽くしたいんです」

 

子どもたちの未来のために大急ぎで変わらなければならない

そこでガブリエラは核融合エネルギーの実験施設や企業に足を運び、科学者から直接話を聞いて知識を深め、装置の構造や色彩、あるいは研究者のユニフォームからたくさんのヒントを得た。

「たとえばITERという実験施設を訪れたことは、宗教的体験と表してもいいくらいで、遠い未来の世界に踏み込んだかのような気分でした。天井がものすごく高くて、ボーイング747と同じ重量だという巨大な磁石が設置されていて。ショーでジジ・ハディッドが着用したタンクドレスのデザインも、ITERで見たメッシュ状の装置が着想源です。そんなふうに、視覚的に得たインスピレーションをもとにコレクションを構築しました。だからといってコンセプト先行のコレクションではなく、究極的には、女性たちに実際に着たいと思ってもらえる服が生まれたと自負しています」

ほかにも、核融合炉の形状を模して全体的に丸みを帯びたシルエットを取り入れたり、水素のアイソトープにちなんだ円形の装飾を随所に配したり、さまざまな形で核融合に言及。まさに未来のビジョンを示す、オプティミスティックなムードのコレクションを完成させた。そして素材は言うまでもなく可能な限り環境負荷の低いものを選び、デニムにはリサイクル・コットン、スニーカーにはリサイクル・ポリエステル、アイウェアにはリサイクル・アセテートを使用。「要はゴミから美しいものを創り出しているのですから、こんなに楽しいことはありません」とガブリエラは微笑む。また、製造過程においてはケニアやインドの社会的企業と組み、現地の女性の経済的自立を支援するなど、全工程でエシカルな取り組みを推し進めた。

「私は、子どもたちの未来のために自分たちが変わる必要があって、しかも大急ぎで行動しなければならないという想いに突き動かされています。未来は次の世代のものですから、彼らを守る立場にある人間として、自分の活動領域で最大限の努力をしなければ。私は自分の専門分野に集中したいタイプの人間で、ファッションについてはそれなりに経験を積み、レベルアップしていると思います。ここが私の居場所であり、自分の目的意識を、ファッションを通じて表現しているんです」

 

あり余るエネルギーでライフワークバランスを維持する

実際彼女は、自宅があるニューヨークとパリの間を行き来しながらふたつのブランドのデザイナーを務めているだけでなく、3人の子どもを育てる母親でもある。以前にも増して多忙なはずなのに、苦にしている様子はまったくない。

「逆に、なぜ誰も“ニューヨークとパリの間を行き来しながらふたつのブランドを手掛け、3人の子どもを育てていなかったら、あなたは何をしていたと思いますか?”と聞かないのか、不思議で仕方ないんですよね(笑)。なぜって私にはエネルギーがあり余っているんです。だからこうして忙しくしていないと、周りの人たちの精神状態によくないですし(笑)、クロエとガブリエラ ハースト両社にとってもプラスになります」

それでもストレスがたまったときには、毎日のエクササイズに加えてメディテーションとダンスで解消。「ノンストップで6時間くらい踊れると思います(笑)。アスリート級のメンタリティを要する仕事ですから、肉体面のメンテナンスは怠っていません」と話すガブリエラ。何よりも服に込めた愛を女性たちに受け止めてもらうことに、デザイナーとして喜びを見出しているという。

「私は自分のジェンダーが好きでたまりません。女性という性を自認し、女性であることに伴う苦しみや、女性の感受性を理解するすべての人を愛しています。私たちはありのままで十分に偉大な存在であり、デザイナーとしての私の役割は、彼女たちをさらに強くすること、自分の美しさをより実感できるようにしてあげること、そして彼女たちに心地よさを提供することだけ。主張しすぎず、着る人を引き立てる服を作ることを心掛けています。だから、クロエの服を着ていると力が湧くとか、気分が高揚すると女性たちが言ってくださる以上に、うれしいことはありません」

“ファッションで気候変動問題そのものを解決できるわけではありませんが、クロエには前向きなストーリーを届ける手段があります”

 

ガブリエラが選ぶ今シーズンを象徴するルック。
1 ITERで見た装置に着想を得たシルクのタンクドレス
2 プラズマ核融合のフューシャ色の光にちなんだパンツスーツ
3 リサイクル・コットンと麻で作られたヴィンテージウォッシュデニムのルック
4 昨年9月のショーから。ビジュアル・アーティストのパオロ・モンティエル・コッパが、核融合エネルギーにインスパイアされた演出を加えた